仮想通貨取引所BitMEX、9月23日に取引サービス終了へ 2億ドル超の罰金と売却不成立を経て

2026年7月27日 22:21

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記事提供元:Tech Times

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仮想通貨デリバティブ取引所のBitMEXは、2026年9月23日に取引サービスを終了すると発表した。無期限スワップを普及させた先駆者だが、規制当局による法的措置や市場シェアの喪失、売却の不成立を経て、11年の歴史に幕を下ろす。口座に資金があるユーザーは、維持手数料が発生する前にポジションを決済し、資金を引き出す必要がある。

■無期限スワップの普及と市場シェアの喪失

年間85兆ドル(約1京3940兆円、1ドル=164円換算)規模の世界市場で取引される無期限スワップを普及させた仮想通貨デリバティブ取引所BitMEXは、2026年7月23日、同年9月23日04:00(UTC、日本時間13:00)をもって恒久的に事業を停止すると発表した。セーシェルに拠点を置く親会社HDR Global Trading Limitedは、事業と仮想通貨業界全体を戦略的に見直した結果としてこの通知を出した。これにより、デジタル資産の取引方法を根本から変えた11年の歴史に幕を下ろす。アクティブな口座を持つユーザーには、維持手数料が発生する前にポジションを決済し、資金を引き出すための61日間が与えられている。

今回の閉鎖は支払い不能によるものではない。BitMEXは、現在の資産が負債を上回っており、11年の歴史の中でハッキングやセキュリティ侵害によって顧客資金を1ドルたりとも失ったことがないとしている。同社が乗り越えられなかったのは、規制面での孤立、取り戻せないほどの市場シェア喪失、そしてHDR Globalが希望する条件で撤退するのに必要な金額を支払う買い手が見つからなかった売却プロセスだった。

BitMEXの閉鎖が意味するものを理解するには、まず市場の規模を見る必要がある。BitMEXが主要商品として定着させるうえで大きな役割を果たした中央集権型の無期限スワップ市場は、2025年に推定85.3兆ドル(約1京3989兆円)の取引高を記録し、仮想通貨先物市場における取引の大部分を占めた。閉鎖発表時点でBitMEXが占める割合は、その取引高の約0.08%にすぎなかった。1日の取引高は約40万ドル(約6560万円)で、世界のデリバティブ市場では誤差にも満たない水準だった。

BitMEXは、最終的に自らがシェアを失うことになった市場の形成を先導した。アーサー・ヘイズ、ベンジャミン・デロ、サミュエル・リードの3氏は、個人トレーダーにプロ向け水準の仮想通貨デリバティブ取引を提供するという使命を掲げ、2014年に同取引所を立ち上げた。2016年には「XBTUSD無期限スワップ」を導入した。これは満期のない先物に似た契約で、8時間ごとにロングとショートのポジション保有者の間で資金を授受するファンディングレートの仕組みにより、価格をビットコインの現物価格に連動させるものだ。日々の決済を必要とせず、従来型先物のロールオーバーコストをなくしたこの仕組みは、世界の仮想通貨デリバティブ業界を支える構造的な基盤となった。2019年半ばまでに、BitMEXは世界の仮想通貨デリバティブ市場の約57%を獲得し、年間取引高は1兆ドル(約164兆円)を超えた。2018年7月には、1日の取引高が最大80億ドル(約1兆3120億円)に達した。

同取引所は、損失を共同で負担する事態を防ぐための保険基金も先駆けて導入した。これは、清算されたポジションの証拠金で損失を完全に補えない場合に、その不足分を吸収する準備金である。これにより、自動デレバレッジ(ADL)を通じて、利益を上げているトレーダーのポジションに損失が連鎖することを防ぐ。ファンディングレートと保険基金の両方が、現在では主要なデリバティブ取引所で標準的な仕組みとなっている。

しかし、BitMEXは、その後の事態を生き延びるために必要な規制対応上の防御力や、十分な厚みを持つ流動性を確保できなかった。

■規制当局の執行と2億ドルの罰金

2020年10月1日、米商品先物取引委員会(CFTC)と米司法省(DOJ)は、BitMEXとその創業者らに対して同時に法的措置を取った。CFTCは、未登録の取引施設を運営し、適切なマネーロンダリング対策(AML)を実施しなかったとして、同取引所を民事提訴した。DOJは並行して刑事事件を起こし、ヘイズ、デロ、リードの各氏と事業開発責任者のグレゴリー・ドワイヤー氏が、AMLプログラムの構築を故意に怠ったと主張した。さらに同取引所について、顧客が事実上匿名で取引できる場所として宣伝し、顧客確認(KYC)手続きが不十分で、米国顧客の存在を隠すためにその記録を削除していたと申し立てた。

法的な影響は、その後5年間にわたって積み重なった。2021年8月、連邦裁判所はBitMEXに対し、CFTCと金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)による民事執行措置を解決するため、1億ドル(約164億円)の支払いを命じた。登録せず、必要な顧客確認手続きも実施せずに運営したとの申し立てについて、BitMEXは事実を認めることも否定することもなく和解した。2024年7月には、法人としてのBitMEXが、2015年9月から2020年9月までの不備をめぐって銀行秘密法違反の罪を認めた。2025年1月には、政府が当初求めていた4億1700万ドル(約683億8800万円)に対し、連邦判事がさらに1億ドル(約164億円)の罰金を科した。3人の共同創業者は2022年にそれぞれ有罪を認め、合計3000万ドル(約49億2000万円)の没収に同意した。ヘイズ氏には6カ月の自宅拘禁と2年間の保護観察、デロ氏には30カ月の保護観察、リード氏には18カ月の刑が言い渡された。

2025年3月、トランプ大統領はヘイズ、デロ、リード、ドワイヤーの4氏全員に完全恩赦を与えた。デロ氏は声明で、当初の訴追は「ほとんど知られていない時代遅れの法律」に基づくものだったと表現し、同取引所は「不当に見せしめにされ、政治的な理由で犠牲にされた」と述べた。恩赦によって共同創業者らの連邦犯罪記録は解消されたものの、それは評判と事業運営への打撃によってBitMEXが市場首位から存在感の乏しい取引所へと後退してから、4年以上が経過した後のことだった。

一連の規制措置は、最終的に致命傷となる流動性の流出を引き起こした。BinanceとBybitは、2020年の提訴後にBitMEXを離れたトレーダーを取り込んだ。分散型ではHyperliquid、中央集権型ではOKXやBybitなどの新しい取引所が、より厚い流動性、幅広い商品ラインアップ、過去の法的問題を抱えていないという条件を生かし、無期限スワップ市場で競争した。CoinGeckoが追跡する中央集権型無期限取引所上位11社のデータによると、2026年初頭までに、Binanceは中央集権型無期限取引高の約33%、OKXは約15%を占めていた。

■売却の失敗と経営陣の相次ぐ離脱

HDR Globalが売却によって事業から撤退しようとした試みは、公然と不成立に終わった。同社は2024年後半、ブティック型投資銀行のBroadhaven Capital Partnersを起用して売却プロセスを進めた。約10億ドル(約1640億円)規模の取引に関心が寄せられていると報じられたものの、買い手は現れなかった。当時、業界のM&Aは相応の取引高を持つ取引所に集中していた。KrakenとCoinbaseは、仮想通貨オプション取引で高いシェアを持つDeribitに関心を示していたと報じられている。一方、BitMEXの1日当たりの取引高は100万ドル未満であり、相応の企業評価額を正当化することは困難だった。

閉鎖発表に先立つ経営陣の相次ぐ離脱は、実際にはすでに事業の縮小が進んでいたことを示している。発表の約3週間前に当たる2026年6月29日、ステファン・ルッツCEOが辞任し、イナ・スタイナーCFOとラファエル・ポランスキー最高成長責任者も退任した。元グローバル法務責任者兼COOのピーター・ウィルキンソン氏がCEOを引き継いだ。これは成長への投資ではなく、閉鎖を前に不可欠な機能を1人の幹部の下へ集約するコスト統合策であることを示していた。7月には21の契約が上場廃止となり、すでに流動性が低下していた注文板から商品がさらに削除された。

BitMEXが作り上げたモデルを基に、自社の無期限スワップ事業を構築したBybitの共同創業者兼CEO、ベン・チョウ氏は、今回の閉鎖について次のように述べた。「BitMEXは無期限スワップを開拓し、世界最大の仮想通貨取引所になった。何百万人もの人々に利用され、Bybitを含む後続の取引所に影響を与えた。規制当局はBitMEXを標的にしたが、そのプロダクトは逆風を乗り越えて生き残った」

■9月23日までの資金引き出し

BitMEXは、事業終了までのプロセスを3段階に分けている。現在の段階である通常取引は、長くは続かない。2026年8月26日04:00(UTC、日本時間13:00)から、同取引所はリデュースオンリーモードに移行する。新規ポジションは建てられず、ユーザーは既存のポジションを縮小または決済することだけが可能となる。同日から9月23日の最終閉鎖まで、BitMEXは残っている未決済契約を段階的に強制決済する。9月23日04:00(UTC、日本時間13:00)には、残るすべてのポジションが強制決済され、取引所サービスが終了する。

重要なのは、取引所サービスの終了後も、資金を引き出す目的に限ってアクセスできる点だ。本人確認(KYC)を完了しているものの、9月23日以降もプラットフォームに資金を残しているユーザーには、月額50ドル(約8200円)または残高に対する年率1%相当額のうち、いずれか高い方が維持手数料として課される。この手数料は、事前通知のうえでさらに引き上げられる可能性がある。ステーキングされていたすべてのBMEXトークンは、すでにステーキングを解除され、ユーザーのウォレットに返還されており、直ちに引き出せる。ビットコインのブロックチェーンで取引が承認されるまでには、通常時でも最大1時間かかることがあり、混雑時にはさらに長引く可能性がある。ユーザーは最終日まで待つべきではない。同取引所は、この発表に便乗したフィッシングの増加についても警告し、引き出しを迅速化したり優先したりする正規のサービスは存在しないとしている。

■BMEXトークンの暴落と取引所依存資産のリスク

閉鎖に対する市場の反応は即座に表れた。BitMEXのネイティブユーティリティトークンであるBMEXは、発表を受けて約98%下落し、時価総額は推定49万7000ドル(約8150万円)まで縮小した。このトークンの有用性は、取引所が運営を続けることを完全に前提としていた。手数料の割引をはじめとするプラットフォーム固有の特典は、閉鎖が発表された時点で価値を失った。ユーザー基盤が拡大し、事業が多角化され、1日当たり数億ドルの取引高を持つ取引所を背景とするBNB(Binanceのネイティブトークン)やOKB(OKXのトークン)とは異なり、BMEXには取引所とは独立した価値の源泉がなかった。

この暴落は、2022年11月のFTX破綻時に起きたFTT(FTXのネイティブ取引所トークン)の急落と重なるものであり、構造的な教訓を改めて浮き彫りにしている。取引所トークンは、独立した価値を持つ金融資産ではなく、取引所が事業を継続できるかどうかに連動する資産だ。取引所の事業継続性が失われれば、トークンの価値もそれに追随する。

■業界再編とパイオニアの終焉

BitMEXの閉鎖は、FTX破綻後に進む仮想通貨市場構造の再編に、新たな一章を加えるものだ。2026年初頭にBit.comの閉鎖を加速させたのと同じ要因が、ここにも表れている。一定の事業規模がなければ負担できないコンプライアンスコスト、より資本力のある取引所への流動性の移動、そして利益率が低下する一方で要求が厳しくなる規制環境である。1日当たりの取引高が40万ドルのデリバティブ取引所にとって、複数の法域で事業を運営するために必要な法務・コンプライアンス体制を維持することは、経済的に成り立たない。

この構造的な皮肉は、業界でも明確に認識されている。現在、中央集権型市場で年間推定85兆ドルの取引高を生み出す無期限スワップを設計した取引所が、自ら作り上げた市場で誤差にも満たない1日の取引高となり、撤退しようとしている。BitMEXが発明した商品は極めて複製しやすかった。そのため、同社が法的な逆風に直面すると、競合各社がその仕組みを全面的に採用し、BitMEXの存続を支えていた流動性を奪っていった。

ユーザーに向けた同社の通知は、11年間にわたる途切れのない運営、ハッキングによる顧客資金の損失ゼロ、そして世界のデリバティブ市場を変えたイノベーションの実績という、同社が正当に主張できる点に焦点を当てていた。しかし、プラットフォームに資金を残しているユーザーにとって、こうした実績は資金の引き出し期限ほど重要ではない。

■注目ポイントQ&A

●9月23日までに引き出さなかった場合、BitMEXの資金はどうなりますか?

2026年9月23日に取引所サービスが終了した後も、BitMEXのアカウントには引き出し専用モードでアクセスできます。ただし、KYC(本人確認)済みユーザーが残した資金には、月額50ドル(約8200円)または残高に対する年率1%相当額のうち、いずれか高い方が維持手数料として課されます。手数料は毎月差し引かれます。同社は、事前通知のうえでこの手数料をさらに引き上げる可能性があるとしています。手数料を避けるには、期限前に資金を引き出す必要があります。ビットコインのブロックチェーンで取引が承認されるまでには、通常時でも最大1時間かかる場合があるため、余裕を持って手続きしてください。

●普及させた無期限スワップが仮想通貨デリバティブの主流商品となっているのに、なぜBitMEXは存続できなかったのですか?

無期限スワップの仕組みは容易に複製でき、競合他社による実装を防ぐ知的財産権上の保護はありません。BitMEXは2020年に米規制当局による法的措置を受け、合計2億ドル以上の罰金を支払ったことで、流動性を維持するために必要な評判と事業運営上の基盤を失いました。Binance、Bybit、OKXは、BitMEXと同じ商品設計を採用しながら、BitMEXが抱えたような法的問題を持たず、より幅広い商品を大規模に提供しました。2025年の創業者らに対する大統領恩赦を含め、BitMEXの法的問題が決着した頃には、市場のシェアはすでに恒久的に再配分されていました。1日当たりの取引高が40万ドルでは規制対応コストを負担し続けることが難しく、事業を継続するよりも秩序立てて終了する方が現実的となりました。

●米国政府はどのようにBitMEXを訴追し、具体的に何が問題とされたのですか?

CFTCとDOJは、2020年10月1日にBitMEXに対する法的措置を開始しました。CFTCは、未登録の先物取次業者およびスワップ執行施設として運営していたと主張し、DOJは、マネーロンダリング対策プログラムを故意に構築しなかったと主張しました。規制当局は、BitMEXが2015年9月から2020年9月まで、本人確認をせずに顧客の登録と取引を認め、米国顧客の存在を隠すために記録を削除し、事実上匿名で取引できる場所としてプラットフォームを宣伝していたと申し立てました。BitMEXは2024年7月に銀行秘密法違反の罪を認め、2025年1月には1億ドルの罰金を科されました。これは政府が当初求めていた4億1700万ドルを大きく下回るものの、CFTC、DOJおよび創業者個人に関する支払いを含む、2億ドル超の規制関連コストの一部です。

●BitMEXの閉鎖後も無期限スワップ市場は健全ですか?

はい。BitMEXは発表時点で無期限先物取引高の約0.08%を占めるにすぎず、その撤退による市場全体への直接的な影響は限定的です。より広い市場は拡大しており、CoinGeckoによると、中央集権型無期限取引所の2025年の取引高は85.3兆ドルでした。また、分散型無期限スワップ市場の取引高は、2024年の1.5兆ドルから2025年には6.38兆ドルに増加しました。中央集権型市場ではBinanceが約33%で最大のシェアを持ち、分散型市場ではHyperliquidが取引を主導しています。BitMEXが主流に押し上げた商品は、それを普及させた取引所よりも長く生き残っています。

元記事: BitMEX Exchange Shuts Down September 23 After $200M in Fines and Failed Sale

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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