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中国EVのXPENGが広州でロボタクシーのテストを開始 カメラベースの独自AI「VLA 2.0」採用

XPENG Robotaxi (xpeng.com)[写真拡大]
中国のEVメーカーXPENG(シャオペン)は2026年7月10日、広州でロボタクシーの従業員向けテストを開始した。同社のシステムは高価なLiDARや高精度マップに依存しないカメラベースの独自アーキテクチャを採用しており、自社で車両を運用するのではなく技術ライセンスを提供するビジネスモデルを掲げている。Waymo(ウェイモ)などの先行企業がすでに大規模な商用展開を進めるなか、XPENGの技術的アプローチとデータプライバシーに関する課題が注目されている。
■VLA 2.0:従来システムの課題を解決する統合型AI
XPENGのロボタクシープラットフォームの中核となるのが、2026年3月に発表された第2世代の「Vision-Language-Action(VLA)モデル」である。このシステムは、同社独自のTuring AIチップを4基搭載し、3,000 TOPSの車載コンピューティング性能を提供する。XPENGによれば、これは執筆時点で展開されている自動運転車として世界最高水準だという。
従来の自動運転システム(旧バージョンのTesla Full Self-Drivingや、Waymo、Mobileyeなどのモジュール型システム)は、認識、予測、計画、制御という複数のモジュールを順番に処理する。しかし、モジュール間の受け渡しごとに情報の欠落や遅延が発生するリスクがある。
VLA 2.0は、このプロセスを単一のニューラルネットワークに統合した。カメラ画像を入力すると、ステアリングやアクセル、ブレーキの操作コマンドが直接出力される。ここでの「Language(言語)」とは対話インターフェースではなく、システムに意味論的な推論能力を与える大規模言語モデルのバックボーンを指す。これにより、交通整理をする作業員や横断歩道に向かう子供などを解釈し、別々のモジュールを経由せずに直接運転行動を生成できる。XPENGは、困難な運転シナリオを含む1億本のビデオクリップでVLA 2.0を訓練したとしている。
一方で、このアプローチには明確なトレードオフが存在する。LiDARや事前構築された高精度(HD)マップを使用せずカメラのみに依存することで、車両あたりのコストは大幅に削減される。LiDARはセンサー1つにつき500〜2,000ドル(約8万1000円〜32万4000円、1ドル=162円換算)以上のコスト増となり、HDマップの維持にも多額の費用がかかるためだ。しかし、カメラベースのシステムは悪天候や低照度環境で性能が低下することが広く指摘されており、独立した学術研究でも、こうした状況下ではカメラとLiDARを融合したシステムの方が優れていると一貫して報告されている。XPENGは、雨や霧、夜間走行におけるVLA 2.0の性能について、第三者による独立した安全性評価を公開していない。同社が主張する「運転効率の23%向上」や広州のラッシュアワーでの性能は、あくまで自己申告の数値である。
なお、Electrekのテストドライバーは2026年4月、VLA 2.0を搭載したXPENG P7 Ultraで北京の交通網を40分間走行し、一度も介入することなく「機械がルールに従っているというより、運転の直感に近い」と評価した。これは意味のあるデータポイントではあるが、独立した安全監査と同等ではない。
■マップ不要のアーキテクチャとライセンスモデル
XPENGのロボタクシー事業のモデルは、現在の市場リーダーとは根本的に異なる。WaymoやBaidu(百度)のApollo Goは自社で車両を所有・運営しており、Waymoは2026年半ば時点で3,500台以上、Apollo Goは27都市で1,000台以上を稼働させている。両社は車両の維持にかかる資本コストと、進出する各都市で安全性を証明する運用上の負担を負っている。
対照的に、XPENGは技術プロバイダーおよびライセンスパートナーとしての立ち位置を意図している。ソフトウェア、ハードウェア、AIシステムを現地の事業者に提供し、実際のサービス運営は事業者に委ねるというものだ。CEOの何小鵬(He Xiaopeng)は7月9日の事業会議で、目標はインフラを構築して共有することであり、資産集約的な車両運営で事業者と競合することではないと明言した。
このモデルを経済的に成り立たせているのが、カメラのみでHDマップを必要としないアーキテクチャである。ライセンスパートナーは、数ヶ月の時間と多額の資金を費やして対象エリアのセンチメートル単位のHDマップを作成・維持することなく、新しい都市にXPENGのシステムを導入できる。この摩擦の軽減こそが、センサー選択の真の競争上の理由である。XPENGは7月9日の会議で、欧州、中東、東南アジアの潜在的なパートナーとすでに協議を行っていることを確認した。
XPENGは、Autnmy AI/S&P Dow Jonesが算出する「Road to Autonomy Index」のトップ層にはまだ名を連ねていない。2026年6月のランキングでは、Waymo、Apollo Go、Pony.ai、WeRide、Teslaが世界のトップ5とされている。この指標は収益を生む商用展開を重視しており、XPENGはまだ従業員テストの段階にあるためだ。ライセンスモデルが成功すれば、資産集約型の事業者には真似できないスピードでパートナーを通じて展開を拡大できる可能性があるが、それはあくまで条件付きの予測にすぎない。
■先行するWaymoやApollo Goとの比較
競争環境を客観的に見れば、XPENGがテストを開始した現時点で、上位の事業者はすでに何年もの商用展開の経験を持ち、数千万回に及ぶ実際の乗車から訓練データと運用ノウハウを蓄積している。Waymoは2026年に累計2,000万回の無人乗車を突破し、Apollo Goは累計2,200万回を超えた。アーキテクチャがいかに洗練されていようと、8ヶ月の開発期間ではこの運用実績の深さを再現することはできない。
VLA 2.0のベンチマークは自己申告によるものだ。23%の運転効率向上という数値は、WaymoやApollo Goの現在のソフトウェアではなく、XPENG自身の過去のシステムと比較したものである。現在の市場リーダーのシステムとVLA 2.0を比較した第三者機関による性能評価は公開されていない。何小鵬が掲げる「2026年8月30日までにTesla FSD v14.2に追いつく」という目標は、自社の立ち位置に対する評価を反映した競争上の野心にすぎない。なお、Teslaは現在、中国の3つの事業者に次ぐ世界第5位にランクされている。
XPENGの構造的な強みは、消費者向けEVフリートが生み出すデータのフライホイール効果にある。ロボタクシーを駆動するのと同じTuringチップとVLAアーキテクチャは、2026年第2四半期だけで10万3,295台を出荷した同社の市販車ラインナップのL2+インテリジェント運転システムにも搭載されている。VLA 2.0を搭載した市販車が走行するすべての距離が、ロボタクシーの訓練パイプラインにフィードバックされる。Waymoのような自動運転専業企業には、このような製品横断的なデータソースはない。市販車の多様な運転データが、WaymoやApollo Goが収集してきた専用ロボタクシーの運用データの深さを補えるかどうかは、実際の展開によってのみ明らかになる未解決の疑問である。
規制面での道筋も未解決だ。XPENGは広州で公道テストの許可を得ており、2026年中に同市で試験運用と実証サービスを完了する計画である。完全無人の商用サービスは2027年初頭に予定されているが、そのスケジュールを実現するには、中国の規制当局から無人L4商用運用の承認を得る必要があり、現時点ではまだ認可されていない。国際的なライセンス提携においては、各国の自動運転規制を都市ごとにクリアするという複雑さが加わる。ライセンスモデルはこの負担を現地パートナーに転嫁するだけで、排除するわけではない。
■フォルクスワーゲンの採用が意味するもの
XPENGのVLA 2.0に対する最も信頼できる外部からの評価は、フォルクスワーゲン(VW)によるものだ。2023年に約7億ドル(約1134億円)を投資し、XPENGの株式の4.99%を保有するVWは、中国市場でVLA 2.0を採用する最初の外部顧客として名を連ねた。VWは株式を保有しているため中立的な評価者ではないが、プレスリリースの主張だけでAI運転システムを採用することはない、高度な技術力を持つ自動車メーカーである。このライセンス契約は、技術的基盤に対する意味のある信任投票と言える。
ただし、VWの採用が証明していないこともある。それは、VLA 2.0が独立したテストで競合システムと同等の性能を発揮することや、いずれかの管轄区域で無人L4商用運用に必要な安全基準を満たしていること、あるいは中国の都市部での性能が、国際的なパートナーを通じて直面する多様な道路環境や気象条件、交通行動に一般化できることではない。
■乗客データと中国の法律に関する懸念
XPENGは広州に本社を置く中国企業であり、その中国の関連会社は中国の国家安全保障およびデータに関する法律の全面的な適用を受ける。広州であれ、将来の欧州、中東、東南アジアのパートナー都市であれ、XPENGのロボタクシーサービスを利用する乗客は、リアルタイムの位置情報、ルートデータ、そして場合によっては車内データを生成し、それらは中国の関連会社が運営または維持するシステムに送信される。
この構造的な枠組みを作り出しているのは以下の3つの法律である:
・中国国家情報法(2017年):第7条は、すべての組織と市民に対し「法に従い、国家情報活動を支持、支援、協力すること」を義務付けている。第14条は、情報機関にその協力を要求する権限を与えている。この法律は、データが物理的にどこに保存されているか、あるいはどのパートナーを通じてサービスが提供されているかにかかわらず、XPENGの中国関連会社に適用される。
・中国データ安全法(2021年):第36条は、中国政府の承認なしに、中国国内に保存されているデータを外国の司法機関や法執行機関に提供することを禁じている。これはデータの国外持ち出しを制限する一方で、中国国家によるアクセスは維持されることを意味する。
・中国サイバーセキュリティ法(2026年1月1日改正):同法の域外適用範囲が拡大され、違反に対する罰則が強化された。
XPENGは、管轄区域ごとに隔離されたデータアーキテクチャを運用していると述べている。しかし、ロボタクシープラットフォームにおけるそのような隔離の範囲や有効性を確認する、独立した第三者によるセキュリティ監査は公開されていない。また、XPENGには過去にプライバシーに関するインシデントの記録がある。2021年、同社はショールームの訪問者から同意なしに顔認識データを収集していたことを認めている。
ロボタクシーのデータ収集プロファイルには、サービスの性質上、正確な出発地と目的地の位置情報、移動時間、そして車両の設定によっては車内カメラのデータが含まれる。乗客には、XPENGの中国関連会社に対し、第7条に基づく中国政府の情報提供要請を拒否させるような契約上または技術上のメカニズムはない。これはコストと天秤にかけるようなリスクではなく、中国の管轄下にある企業が運営するサービスを利用する際の固定的な法的条件である。
■今後のロードマップと課題
広州は概念実証(PoC)の都市として位置づけられている。7月10日に開始された従業員向けテストフェーズは、2026年末までに試験運用と実証サービスへと進む予定であり、XPENGはこの都市での結果を利用して、国際的なライセンスパートナー向けの再現可能な運用プレイブックを作成するとしている。ロボタクシー事業会議での何小鵬の発言は、これを10年がかりの軌道として位置づけていた。自動運転車は移動ロボットであり、現在ロボタクシーを駆動しているTuringチップとVLAアーキテクチャは、最終的には「フィジカルAI」の傘下で同社の人型ロボットや空飛ぶクルマのプログラムにも拡張されるという。
XPENGのカメラのみ・マップ不要のアーキテクチャが、実行可能な商用ロボタクシーのシステムとして証明されるかどうか(より広範な規制当局の承認に必要な安全記録と、WaymoやApollo Goと競争するために必要な運用密度を生み出せるかどうか)は、依然として未知数である。7月10日に始まった社内従業員向けのテストフェーズは制御された環境であり、商用運用ではない。CEOによる初の自動運転乗車は、その制御されたフェーズに向けた技術的な準備が整ったことを示すものであり、公開市場向けの商用準備が整った証拠ではない。次の重要なマイルストーンは、XPENGが社内従業員から広州の一般市民へと対象を移行する時である。何小鵬自身の7月10日のWeiboへの投稿によれば、そのステップは間もなく訪れる可能性があるという。
■注目ポイントQ&A
●XPENGのVLA 2.0アーキテクチャは、WaymoやTeslaの自動運転システムとどう違うのですか?
WaymoやTeslaのFull Self-Drivingは、認識、予測、計画、車両制御といった個別のソフトウェアモジュールを使用し、各段階で処理された情報を次に渡すモジュール型のパイプラインアーキテクチャを採用しています。XPENGのVLA 2.0は、この連鎖を単一のニューラルネットワークに置き換え、カメラ画像を直接入力として受け取り、ステアリング、アクセル、ブレーキのコマンドを出力します。これにより、遅延が蓄積し情報が失われる中間的な受け渡しポイントを排除しています。実用上の違いは、応答速度の向上と、複数の処理層を介さずに複雑で曖昧なシーンを処理できる点にあります。一方で、カメラのみのシステムは悪天候や低照度環境で性能が低下することが報告されており、WaymoのようなLiDAR搭載システムが視界に依存せず測距能力を維持できる点とはトレードオフの関係にあります。
●XPENGのロボタクシーは中国国外でも利用できるようになりますか?また、それはいつですか?
XPENGは、自社で国際的なフリートを運営するのではなく、ライセンスモデルを追求しています。同社は7月9日、欧州、中東、東南アジアの潜在的なパートナーとすでに協議を行っていることを確認しました。このモデルでは、XPENGが自動運転システムを提供し、現地のパートナーが車両を運営し、それぞれの都市で規制当局の承認を管理します。スケジュールは、XPENGが広州でのパイロット版と試験運用(2026年目標)を完了することと、将来のパートナーがそれぞれの管轄区域で自動運転車の運営許可を取得することの両方に依存しています。2026年7月13日の時点で、具体的な国際的な展開日や確定したパートナー契約は発表されていません。
●LiDARを搭載しないXPENGのカメラのみのアプローチは安全ですか?
XPENGのカメラのみのシステムは、低照度や悪天候の条件下での安全性能について、第三者による独立した監査を受けていません。同社が自己申告している数値(自社の過去のシステムと比較して運転効率が23%向上したことや、広州のラッシュアワーでの性能が熟練した人間のドライバーに匹敵するという説明)は、第三者による安全性の検証と同等ではありません。独立した学術研究では、視界不良のシナリオにおいて、カメラとLiDARのセンサーフュージョンがカメラのみのシステムを上回ることが一貫して示されています。2026年4月に北京の交通網を40分間走行したElectrekのテストドライバーは介入がなかったと報告していますが、40分間の都市部でのテスト走行は統計的に十分な安全性のデータセットとは言えません。完全無人の商用運用を行うには、XPENGが中国の規制当局の承認を得るのに十分な安全指標を示す必要がありますが、この基準はまだ満たされていません。
●XPENGのロボタクシーに乗車した場合、私の位置情報や乗車データはどうなりますか?
XPENGのロボタクシープラットフォームは、リアルタイムの位置情報、ルート、乗車データを収集し、車両の設定によっては車内センサーのデータも収集する可能性があります。XPENGは中国企業であり、その関連会社は中国国家情報法(2017年)第7条の適用を受けます。同条は、すべての組織に対し、国家の情報活動を支持し協力することを義務付けています。この義務は、データが物理的にどこに保存されているか、あるいはどのパートナー都市を通じてサービスが提供されているかにかかわらず適用されます。XPENGのロボタクシーにおけるデータ隔離アーキテクチャについて、独立した監査は公開されていません。中国国外でライセンス供与されたXPENGのロボタクシーサービスを利用する乗客には、この法的枠組みに完全に対処できる契約上または技術上のメカニズムはありません。
元記事: XPENG Starts Robotaxi Testing in Guangzhou: Camera-Only VLA Drops the HD Map
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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