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GMのEV戦略に大転換か、キャデラック「Optiq」が中国製プラットフォーム「逍遥」採用との報道

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ゼネラルモーターズ(GM)が、高級ブランド「キャデラック」のコンパクトクロスオーバーEV「Optiq(オプティク)」の次期モデルにおいて、米国設計のプラットフォームから中国で開発されたアーキテクチャへ移行することを計画していると報じられた。これが実現すれば、欧州や韓国で販売される米国ブランド車の中核に、中国国営企業の関与するソフトウェアが組み込まれることになる。GMの米国広報担当者はプラットフォームの存在は認めたものの、Optiqに関する報道については「憶測にすぎない」としている。
■米国製「Ultium」の挫折と中国市場での敗北
GMがこの決断に至った背景には、同社の第3世代EVアーキテクチャ「Ultium(アルティウム)」が直面した深刻な不振がある。Ultiumは、キャデラック「Lyriq」「Vistiq」「Optiq」やシボレー「Blazer EV」などの土台となるプラットフォームであり、GMはかつて、2030年までに年間2800億ドルの増収をもたらしテスラを追い抜く原動力になると豪語していた。しかし、現実に起きたのは、近年の自動車業界でも際立って深刻な技術的失速だった。
米国のバッテリー組み立て工場では自動化システムの不具合が相次ぎ、生産ペースが極端に低下。2024年半ばまでに40万台のUltium搭載EVを生産するという目標は、数カ月どころか数年単位で遅れることとなった。さらに、Blazer EVは発売直後にソフトウェアの不具合で販売停止に追い込まれ、オハイオ州のセル製造工場は2026年1月から稼働を停止したままで、再開の目処は立っていない。
中国市場での状況はさらに深刻だった。Ultiumをベースに中国市場へ投入されたビュイック「Electra E5」および「E4」は、すでに800V急速充電を標準装備していたBYDやNio(蔚来汽車)、Xpeng(小鵬汽車)といった現地競合勢の前に惨敗した。かつてGMにとって最も収益性の高かった中国合弁会社「SAIC-GM(上汽GM)」の年間販売台数は、2017年のピーク時(約200万台)から2025年には56万2000台へと75%も激減。GMは一連の構造改革費用として27億ドル(約4374億円、1ドル=162円換算)の損失を計上することとなった。
技術的な敗因は明確である。Ultiumが400Vアーキテクチャであるのに対し、中国の競合プラットフォームは800Vから900Vのシステムを標準としていた点だ。
■「900V」がもたらす圧倒的な技術差
400Vと900Vのプラットフォームの差は、単なるマーケティング上の数値ではない。物理的な制約により、充電速度、ケーブルの重量、パワーエレクトロニクスの発熱量に決定的な違いが生じる。
EVの充電電力は「電圧×電流」で決まる。DC(直流)急速充電器の電流には実用上の限界があり、電流を増やしすぎると発熱が急増する。そのため、熱を発生させずに充電電力を高める唯一の方法は電圧を上げることだ。350アンペアで作動する400Vシステムでは約140kWの充電電力にとどまるが、同じ電流のまま900Vシステムにすれば約315kWに達し、10%から80%までの充電時間を約30分から15分未満へと半減できる。
また、900Vを実現するには、従来の400Vで使われていたシリコンIGBTに代わり、インバーターにシリコンカーバイド(SiC)半導体を採用する必要がある。SiCは高電圧でも過熱しにくく、同等出力のシリコンと比較してインバーターの熱損失を約75%削減できるため、パワーエレクトロニクス部品の小型・軽量化が可能になる。
Ultiumの設計は、中国で900Vが標準化する前に固まっていた。そのため、Ultium搭載のビュイック車が中国の店頭に並ぶ頃には、現地ライバル勢はより高速な充電、長い航続距離、高度な運転支援システムをすでに提供していた。その劣勢を覆すためにSAIC-GMが開発したのが、新プラットフォーム「逍遥(Xiao Yao)」である。
■中国主導で開発された「逍遥」プラットフォームの実力
2025年4月にSAIC-GMが発表した「逍遥」は、上海の「パタック(PATAC:汎亜汽車技術センター)」に所属する約3000人のエンジニアが中国市場向けに設計したソフトウェア定義車両(SDV)アーキテクチャだ。名称は、荘子の思想における「何物にも縛られない自由(逍遥)」に由来する。
このプラットフォームは、BEV(電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、レンジエクステンダー(発電用エンジン搭載EV)に対応し、MPV、セダン、SUVといった多様なボディタイプや、前輪・後輪・全輪駆動のすべてをカバーする。すでにビュイック「Electra E7」および「L7」に900V超急速充電システムが搭載され、実用化されている。SAIC-GMの公表スペックによれば、将来的には最大1000Vの充電、最大1000kmの航続距離、最大850kWの出力をサポートする計画だが、これらはあくまで設計目標であり、第三者機関による検証済みの数値ではない。
さらに重要なのは、電圧の向上以上に、SDVとしての設計がUltiumから大きく進化している点だ。従来の車両プラットフォームでは、ブレーキ、照明、インフォテインメント、運転支援などの機能を70〜100個以上の個別ECU(電子制御ユニット)に分散させていた。これに対し「逍遥」は中央集中型のコンピューティングモデルを採用。少数の強力なプロセッサ上でソフトウェアを実行し、各機能をモジュール式サービスとして提供する。これにより、アクティブサスペンションやステア・バイ・ワイヤ、後輪操舵といった機能を、ハードウェアの変更なしにOTA(オーバー・ジ・エア)のソフトウェアアップデートだけで追加・調整できるようになる。初の搭載車であるビュイック「Electra L7」では、50インチのARヘッドアップディスプレイや、Momenta(モメンタ)開発の市街地・高速道路対応運転支援システム、走行中の自動駐車機能などがすでに実現しているという。
市場の反応は劇的だった。2026年5月、「逍遥」を搭載したビュイック「Electra E7」は発売初月に1万台以上の販売を記録。これはUltiumベースのビュイック車が中国で一度も達成できなかった大台だ。元GMのエンジニアで現在は独立系アナリストの朱玉龍(Zhu Yulong)氏はロイターに対し、「製品定義と技術ロードマップが、初めて中国チームの手によってしっかりと握られた」と指摘している。
■欧米自動車メーカーに広がる「中国依存」への逆転現象
GMで起きている技術移転の逆転現象は、特異な事例ではない。欧米の主要自動車ブランド全体で同時に起きている構造的なシフトだ。
仏ルノーは、欧州市場向けのコンパクトEV「Twingo E-Tech」を上海の技術センターでわずか21カ月で開発した。フランス本社からは品質基準や労働時間を懸念する声もあったが、ルノーはこの流れを止めるのではなく、欧州のエンジニアを中国に派遣してローテーションさせる方針をとった。独フォルクスワーゲン傘下のアウディは、中国市場向けの新ブランド「AUDI」の開発権限を中国のR&Dセンターに完全に委譲し、ドイツで開発される従来の「4つの輪」のブランドとは明確に分離した。韓国の現代自動車(ヒョンデ)も、中国拠点を地域的なR&Dおよび輸出ハブへと転換しつつある。
米調査会社ガートナーのバイスプレジデント、ペドロ・パチェコ氏は「既存の自動車メーカーは、テクノロジーの世界に適応しようともがいている製造企業だ。彼らは、優れた技術人材が集まる場所、すなわち中国へと向かったのだ」と分析する。中国ドイツ商工会議所によると、ドイツの自動車産業において、現地およびグローバル市場向けの研究開発(R&D)に占める中国拠点の割合は、わずか2年で12%から33%へと急増している。
過去数十年にわたり、技術の流れはデトロイト、シュトゥットガルト、東京から中国の合弁相手へと一方通行であり、現地ではライセンス生産やローカライズが行われるのみだった。しかし「逍遥」のストーリーは、その構造が完全に逆転したことを示している。そして今、企業の取締役会だけでなく、米連邦議会の公聴会でも「その技術シフトに伴って何がもたらされるのか」という懸念が議論され始めている。
■ソフトウェアを制する者が車を制する:データ安全保障の懸念
この問題の本質は、次期キャデラック「Optiq」がどの市場に投入されるかではなく、「車を動かすソフトウェアスタックを誰が管理・維持するのか」という点にある。
GMの合弁相手でありパタック(PATAC)の共同所有者であるSAIC(上海汽車集団)は、上海市政府が所有する国営企業だ。中国企業であるSAICとその子会社は、中国の「国家情報法」(2017年制定)第7条の適用を受ける。同条文は、すべての組織および市民に対し「国家の情報活動を支持し、これに協力し、これと協調すること」を義務付けている。この義務は、技術が世界のどこで展開されていようと、GMがどのようなプライバシーポリシーを掲げていようと、また実際に政府からデータ提供要求があったかどうかにかかわらず、中国法の傘下で事業を行う以上、避けて通れない構造的条件となる。
SDVプラットフォームは、一度作れば終わりのハードウェアではない。車両の寿命が尽きるまで、OTAを通じて継続的なメンテナンス、セキュリティ更新、機能追加が行われる「生きたソフトウェアシステム」だ。もしパタックのエンジニアが「逍遥」のソフトウェアスタックを執筆・維持するのであれば、その車両群に対して継続的なOTA権限を持つのは、中国国営企業が共同支配する組織ということになる。この権限は、その車が販売されるすべての国で維持される。
これこそが、米商務省産業安全保障局(BIS)が2025年1月に最終規則を公表し、中国やロシアの支配下にある事業者が設計・開発・製造・供給したコネクテッドカー向けハードウェアおよびソフトウェアの米国販売を禁止した理由だ。この規則は2025年3月17日に発効し、ソフトウェアに関する禁止措置は2027年モデルから段階的に適用される。さらに、超党派の議員が提出した「コネクテッド車両安全法案」が可決されれば、2027年1月1日から規制はさらに強化される見通しだ。
実務上の結論として、現行法の下では「逍遥」ベースのキャデラック「Optiq」を米国の消費者に合法的に販売することはできない。ロイターの報道によれば、同プラットフォームはまず欧州や韓国市場に投入される可能性が高い。これらの地域には現在、中国国営企業の影響下にあるソフトウェアプラットフォームが車両のOTAシステムを担うことを禁じるような、米国と同等の法的規制が存在しないためだ。
米政策研究機関「アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)」が2026年5月に発表したコネクテッドカーのセキュリティに関する報告書では、懸念されるデータ収集プロファイルとして、位置履歴、運転パターン、カメラやマイクの映像・音声、ドライバーのバイオメトリック監視(視線追跡、頭部の位置)、行動データなどが挙げられており、これらはすべてメーカーのクラウドインフラに送信される。「逍遥」ベースの車両の場合、そのクラウドインフラはパタックが管理するシステムを経由することになる。
なお、米国の自動車メーカー自身もデータプライバシーの問題を抱えている。GMの「OnStar」サービスがドライバーの行動データを同意なしにデータブローカーに売却していたことが発覚し、カリフォルニア州で1275万ドルの和解金を支払い、連邦取引委員会(FTC)から5年間の位置データ共有禁止処分を受けた事例がある。しかし、これらは同列に語るべきではない。米国のメーカーが違法にデータを販売した場合は米国の法執行機関による処罰を受けるが、中国国営企業が情報機関にデータを提供する法的義務に対しては、米国の国境の外側でそれを阻止する法執行メカニズムは存在しないからだ。
■「逍遥」搭載Optiqはどこで販売されるのか
ロイターは、「逍遥」ベースのOptiqが具体的にどの市場をターゲットにするかについては言及していない。GMは現在、欧州でOptiqとLyriqを販売しており、中国製EVの輸入が急増している欧州市場において、現行のUltiumベースよりも先進的な900Vプラットフォームは強力な競争力になり得る。また、ビュイック「Electra E7」は韓国への導入が報じられている。
さらに、SAICとGMの合弁契約が2027年6月に満了を迎えることも、プラットフォーム移行の議論に緊迫感を与えている。SAICとの合弁を期限の6年前に延長したフォルクスワーゲンとは異なり、GMは契約更新を公式に発表していない。調査会社グローバルデータのアジア予測担当ディレクター、ジョン・ゼン氏はメディアに対し「中国はビュイックにとって不可欠な市場であり、GMやSAICが合弁解消を選ぶことは考えにくい」と述べているが、正式な延長合意は確認されていない。
この不透明さは、ロイターの報道が触れなかった新たな疑問を生む。もし2027年にSAIC-GMが解散または再編された場合、「逍遥」プラットフォームの知的財産権(すでに販売されたキャデラック車のソフトウェアスタックを含む)は誰が管理するのか。その答えはパタックの合弁契約書に記されているはずだが、その内容は非公開となっている。
■注目ポイントQ&A
●「ソフトウェア定義車両(SDV)」とは何ですか?なぜ設計国が問題になるのですか?
SDVとは、スマートフォンのようにOTA(オーバー・ジ・エア)によるソフトウェアアップデートを通じて、車両の機能追加や変更、拡張を主に行う自動車のことです。ソフトウェアを執筆・維持する主体が、製造時だけでなく車両の全寿命期間にわたって車両の制御権を握ることになるため、設計国や開発元が極めて重要になります。開発元が中国国営企業との合弁会社である場合、中国の「国家情報法」(2017年)に基づき、情報活動への協力義務が生じるため、販売される国を問わずデータ安全保障上のリスクが懸念されます。
●GMの「Ultium」プラットフォームは、なぜ中国市場で敗北したのですか?
Ultiumは400Vの電気アーキテクチャを採用しており、急速充電電力が約140〜200kWに制限されていました。これに対し、中国のBYDやNio、Xpengなどの競合他社は、充電時間をほぼ半減できる800V〜900Vのプラットフォームを標準化していました。また、Ultiumはバッテリー組み立ての自動化トラブルによる生産遅延や、ソフトウェアの不具合による販売停止、米国のセル工場の稼働停止など、生産・開発面でも多くの問題を抱え、SAIC-GMの販売台数は2017年から2025年にかけて75%減少しました。
●米国の消費者は「逍遥」プラットフォーム搭載のキャデラック「Optiq」を購入できますか?
現行法の下では購入できません。米商務省産業安全保障局(BIS)が2025年1月に発表した最終規則により、中国やロシアの支配下にある事業者が設計・開発したコネクテッドカー向けソフトウェアを搭載した車両の米国販売は禁止されており、2027年モデルから段階的に適用されます。GMと中国SAICの合弁会社であるパタック(PATAC)が開発した「逍遥」はこの規制対象となります。なお、GMの米国広報担当者は、Optiqへの同プラットフォーム採用報道自体を「憶測」としています。
●「逍遥」ベースのキャデラックが欧州や韓国で販売された場合、どのようなプライバシーリスクがありますか?
コネクテッドカーは、位置情報、運転履歴、カメラ映像、マイク音声、ドライバーの生体情報(視線や頭部の位置など)を収集し、メーカーのクラウドに送信します。「逍遥」搭載車の場合、このデータはパタックが管理するシステムを経由します。パタックの共同所有者であるSAICは中国の国家情報法に従う義務があるため、GMのプライバシーポリシーに関わらず、中国政府によるデータアクセスを完全に防ぐ構造的な保証はありません。欧州や韓国には、現時点でこのようなプラットフォームの販売を禁止する米国と同等の法規制はありません。
元記事: Cadillac Optiq Switches to China-Engineered Platform as Ultium Fails Globally
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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