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アップル、英国の8.99億ポンド価格カルテル集団訴訟に反論――「法的欠陥がある」と主張

(Laurenz Heymann/Yender Gonzalez/Unsplash)[写真拡大]
アップルとアマゾンが秘密裏に提携して製品価格を不当に高く維持したとされる、総額8億9900万ポンド(約1816億円、1ポンド=202円換算)の集団訴訟を巡り、英国の競争上訴審判所(CAT)で2日間にわたる審理が行われた。アップル側は原告側の主張に「法的な欠陥がある」として却下を求めている。審判所がこの訴訟を認証すれば、数百万人の英国人消費者が自動的に原告団に含まれることになるが、却下されれば訴訟は2度目の頓挫を迎えることになる。
■アップルによる「市場定義」への反論
専門メディア「MLex」の報道によると、2026年6月30日と7月1日にロンドンで行われた審理において、最も重要な争点となったのは、アップルによる原告側の「市場定義」に対する異議申し立てだった。市場定義とは、原告側が「問題の合意によって実際に競争が制限され、消費者に不利益が生じた」という事実を証明するための法的な枠組みである。
競争法において、市場定義は訴訟全体の土台となる。原告はまず、競争が行われている具体的な市場を特定しなければならず、それができて初めて審判所は合意による反競争的影響を評価できる。アップルの弁護団は、原告側が定義した市場は誤っており、有効な市場定義がなければ、問題の合意が英国の全小売チャネルで価格上昇を招いたという因果関係の理論は法的に成り立たないと主張した。
アップル側は、この「根本的な」欠陥があるため、訴訟自体を認証すべきではないとの立場をとっている。もし審判所がアップルの主張を認めれば因果関係の連鎖は崩壊し、原告側はアップルとアマゾンが市場全体の価格に影響を与えるほどの市場支配力を持っていたことや、アマゾン上での独立系転売業者の排除がアップルストアやカリーズ(Currys)、オンラインショップでの価格高騰につながったことを証明できなくなる。
■訴訟の背景にある2018年の合意
原告側の法的主張によると、アマゾンとアップルは2018年10月31日に合意を結び、サードパーティの独立系セラーがアマゾンの英国市場でアップルおよびビーツ(Beats)製品を出品することを制限したとされる。原告側によれば、2019年1月までにほぼすべての独立系転売業者が同プラットフォームから事実上排除された。その見返りとして、アマゾンはアップルから有利な卸売価格の提供を受け、同プラットフォームにおける主要なアップル小売業者として、より高い利益率で多くの製品を販売できるようになったという。
原告側は、これにより同一ブランド製品を扱う業者間の競争(ブランド内競争)が減少し、アマゾンの価格設定が市場の基準点となることで、アマゾンだけでなく英国のすべての小売チャネルで価格が押し上げられたと主張している。
一方、アマゾンは一貫して、2018年の合意は決して秘密のものではなく公表されていたものであり、むしろ競争を促進するものだったと主張している。この合意によってアマゾンは初めて本物のアップル製品を安定して仕入れることが可能になり、模倣品のリスクが軽減され、英国の顧客にアップル製品を迅速に配送できる体制が整ったと説明する。アップルも同様に、正規販売代理店プログラムについて、模倣品防止を目的とした正当なものであると主張している。
■欧州規制当局による過去の判断
今回の訴訟を率いるジャスティン・ル・パトゥレル(Justin Le Patourel)氏らの請求は、全くのゼロから証拠を集めているわけではない。イタリアの競争当局(AGCM)は、2018年10月のアップルとアマゾンの合意を調査し、2021年11月に欧州連合機能条約第101条(英国の第1章禁止規定に相当)に違反していると結論づけ、アップルに1億3450万ユーロ、アマゾンに6870万ユーロの制裁金を科した。その後、2022年10月にラツィオ州のイタリア行政裁判所がこの制裁金を取り消したが、これは手続き上の理由によるものであり、合意が競争に与えた影響に関する当局の事実認定や経済分析自体が否定されたわけではない。
また、スペインの競争規制当局(CNMC)も独自の調査を行い、2023年7月に同様の行為に対してアップルに1億4360万ユーロ、アマゾンに5050万ユーロの制裁金を科した。同当局は、合意前にアマゾンのスペイン市場でアップル製品を販売していた転売業者の90%以上が、合意後に締め出されたと結論づけている(スペインでの制裁金については現在上訴中)。さらに、ドイツの連邦カルテル庁も同様の行為について調査を開始し、その後、ドイツのデジタル市場法に基づくアマゾンの広範な行為へと調査を拡大している。
原告側は、エコノミストの分析によって、イタリアやスペインで記録されたものと同様の競争への影響が英国市場でも確認されていると明言しており、イタリアAGCMの調査による事実記録は、英国での訴訟手続きにおける重要な証拠源であるとしている。
■ガバナンス問題の再燃と1度目の却下
今回の審理は、実質的に同じ競争法違反の主張を認証させようとする2度目の試みである。2023年7月にクリスティーヌ・リーファ(Christine Riefa)教授が起こした最初の訴訟は、2025年1月14日の判決で認証が却下された。これは英国の法曹史上、審判所が集団訴訟の開始申請を全面的に却下した初の事例となった。ただし、却下の理由は競争法違反の主張内容(実体)に根拠がないとされたわけではなく、代表団体のガバナンス(統治)体制にあった。審判所は、リーファ氏が訴訟資金提供者であるアセルティス(Asertis)から十分な独立性を保っていることを証明できず、集団メンバーの利益を守るために資金提供合意の条件を適切に精査していなかったと判断した。
これを受け、過去にBT(ブリティッシュ・テレコム)を相手取った集団訴訟を率いた経験を持つル・パトゥレル氏が、新たな代表団体を立ち上げ、2025年12月15日に代替となる訴訟を提起した。しかし、今回の審理の初日にもガバナンスに関する懸念が再び浮上した。業界誌「Global Competition Review」によると、審判所の所長はル・パトゥレル氏の報酬率に疑問を呈し、それが審判所所長自身の報酬を上回っていると指摘した。代表者の報酬条件が、集団メンバーの利益を守るためではなく、代表者自身を潤すために設定されているのではないかという、前回と同様の懸念が示された形だ。審判所がこの懸念を致命的とみなすかどうかが、今後の判決における重要な焦点の一つとなる。
■英国の消費者が得られる補償と今後の見通し
審判所が今回の訴訟を認証した場合、2018年10月31日から2025年12月15日までの間に、アップルストア、アマゾン、カリーズなど、あらゆる小売チャネルからアップルまたはビーツの製品を購入した英国在住者は、自動的に原告集団に含まれる(携帯電話キャリアの契約に伴う購入は除外される)。アマゾンの顧客だけでも1000万人以上が対象になるとみられている。消費者が現時点で手続きを行う必要はなく、除外(オプトアウト)を希望しない限り自動的に対象となる。
原告側は消費者全体の損失額を総額8億9900万ポンドと見積もっている。認証後に数年かけて行われる裁判で原告側が勝訴した場合、対象となる購入者に補償金が分配される。個々の支払額は、対象期間中に各消費者が購入した製品の量や価格によって決定される。
審判所による認証の可否に関する判断は、2026年後半に下される見通しである。
■注目ポイントQ&A
●この集団訴訟に参加するために何か手続きは必要ですか?
現時点で手続きを行う必要はありません。競争上訴審判所(CAT)がこの集団訴訟を認証した場合、2018年10月31日から2025年12月15日までの間に、英国の小売店でアップルまたはビーツ製品を購入したすべての消費者が自動的に原告団に含まれます(携帯キャリア契約による購入は除きます)。除外を希望しない限り、自動的に対象となります。
●欧州の規制当局はすでにアップルとアマゾンの合意を違法と判断しているのですか?
はい。イタリアの競争当局は2021年11月に、2018年の合意がEU競争法に違反しているとして両社に計2億320万ユーロの制裁金を科しました。この制裁金は2022年10月に手続き上の理由で取り消されましたが、競争阻害に関する事実認定自体は否定されていません。また、スペインの規制当局も2023年に同様の結論を下し、計1億9400万ユーロの制裁金を科しています(現在上訴中)。
●アップルが英国で直面している他の集団訴訟にはどのようなものがありますか?
現在、主に2つの大きな集団訴訟が進行中です。1つはApp Storeの過剰な手数料(最大30%)を巡る訴訟(Kent訴訟)で、2025年10月に審判所レベルでアップル側の敗訴(最大15億ポンドの損害賠償規模)が言い渡され、現在は控訴審が控えています。もう1つはiCloudの独占を巡るWhich?による訴訟で、2026年6月に認証され、損害賠償額は最大30億ポンドと見積もられており、2028年10月に裁判が予定されています。
元記事: Apple Rejects £899M UK Price-Fixing Class Action as Legally Flawed at CAT Hearing
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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