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ソニー対Suno・UdioのAI著作権訴訟が重大局面へ——タバコ訴訟で42兆円を勝ち取った大手法律事務所も参入
生成AIの学習データにおける著作権侵害を巡る法廷闘争が、重大な局面を迎えている。ソニー・ミュージックエンタテインメントがAI音楽生成スタートアップのSunoおよびUdioを訴えた裁判で、2026年7月にもフェアユース(公正利用)の成否を巡る初の連邦地裁審理が行われる見通しだ。さらに、かつてタバコ訴訟で巨額の和解を勝ち取った大手法律事務所が独立系アーティストの集団訴訟に参入し、AI業界全体のコスト構造を揺るがす可能性のある戦いが本格化している。
■AI音楽著作権を巡る初の連邦地裁審理へ
マサチューセッツ州ボストンの連邦地方裁判所で、著作権で保護された音源をAIの学習に使用することが「フェアユース(公正利用)」に該当するかどうかを判断する審理が、数週間後に迫っている。マサチューセッツ地区連邦地方裁判所のF・デニス・セイラー4世首席判事は、2026年7月に「ソニー・ミュージックエンタテインメント対Suno」訴訟の略式判決(サマリー・ジャッジメント)に関する審理を行う見通しである。連邦裁判所の判事がAIの音声学習と著作権の問題に直接切り込むのはこれが初めてとなる。
一方、ニューヨークで進行中の姉妹訴訟「ソニー・ミュージック対Udio」では、2026年6月26日に文書開示(証拠開示手続き)が終了し、審理前の準備が整った。
この期限の前日、新たな法廷闘争の主役が参入した。1998年のタバコ訴訟で2600億ドル(約42兆1200億円、1ドル=162円換算)規模の和解を勝ち取ったことで知られる法律事務所ハーゲンス・バーマン(Hagens Berman)が、SunoとUdioの両社に対する独立系アーティストの集団訴訟に加わることを発表した。
同事務所の共同創設者スティーブ・バーマン氏は、「独立系アーティストやプロデューサーは音楽業界の心臓部であり、AIの台頭によって最も大きな不利益を被る立場にある。UdioとSunoは、何百万人もの独立系アーティストの作品をあからさまに盗み、オンラインプラットフォームの利用規約に違反したと確信している」と声明で述べた。
■560曲から6万曲超へ、データ解析で明らかになった侵害の規模
アメリカレコード協会(RIAA)がユニバーサル ミュージック グループ(UMG)、ソニー、ワーナー ミュージック グループを代表して2024年6月に提訴した当初、訴状に記載された著作権侵害曲は560曲にとどまっていた。しかし、証拠開示手続きによって状況は一変した。
2025年11月3日以降、レコード会社側が雇用した専門家がSunoの外部法律事務所のセキュアルームに入り、2週間かけてSunoの学習データセット内のすべての音声ファイルの「デジタル指紋(フィンガープリント)」を作成した。使用されたのはオーディブル・マジック(Audible Magic)社の特許技術であるコンテンツ認識システムで、音響特性(ピッチ分布、倍音成分、リズムパターンなど)をハッシュ化し、数億曲のライセンス音源データベースと照合した。2026年1月2日に照合が完了し、1月15日に結果がレコード会社側に届いた。
その結果、Sunoの学習データにはユニバーサルとソニーが所有する数百万もの音源が含まれていることが判明した。これを受け、レコード会社側は2026年5月、セイラー首席判事に対し、訴状の対象を560曲から具体的に特定された6万1026曲へと変更することを申請した。これは一致した全体の一部にすぎないとされている。
米国の著作権法では、故意の侵害に対して1作品あたり最大15万ドル(約2430万円、1ドル=162円換算)の損害賠償を請求できる。6万1026曲で計算すると、この訴訟だけで最大賠償額は91億ドル(約1兆4742億円、1ドル=162円換算)を超える。
しかし、Sunoは和解ではなく資金調達の道を選んだ。同社は2026年6月3日、評価額54億ドル(約8748億円、1ドル=162円換算)で4億ドル(約648億円、1ドル=162円換算)のシリーズD調達を発表。わずか7カ月で企業価値を2倍以上に高めた。この投資は、同社の「フェアユース」という法的主張に賭けたものと言える。
■ストリームリッピング疑惑と技術的な争点
独立系アーティストによる集団訴訟では、別の法的な追及も行われている。ハーゲンス・バーマンが提出したUdioに対する修正訴状では、両社が「ストリームリッピング(stream-ripping)」と呼ばれる手法を用いて学習データを収集したと主張している。これは、YouTubeやSpotifyなどのストリーミングプラットフォームの技術的保護手段を回避し、無断で音声を直接ダウンロードするソフトウェア技術である。
これは単なる著作権侵害にとどまらず、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)の「技術的保護手段の回避禁止規定」に違反する可能性がある。2026年5月21日、連邦地方裁判所はUdioによるDMCAストリームリッピング請求の却下申し立ての一部を退け、この主張は裁判で継続して審理されることになった。Sunoに対する同様の却下申し立てについては、まだ判断が下されていない。
技術的な核心部分において、Suno側は「モデルは楽曲をコピーしているのではなく、学習音源からメロディやハーモニー、音色の統計的パターンを『学習』し、それに基づいて全く新しい楽曲を生成している」と主張する。これに対しレコード会社側は、オーディブル・マジックのシステムでSunoの学習ファイルが特定の著作権保護された音源と一致したという事実をもって、保護された表現が学習データ内に存在していると反論している。
■ソニーが和解を拒否し、判決を求める戦略的理由
ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)とワーナー ミュージック グループは、すでに和解しライセンス契約へと移行している。UMGは2025年10月にUdioと和解し、ライセンスに基づくAI音楽プラットフォームの共同開発を開始した。ワーナーは2025年11月にSunoと和解し、Sunoはワーナー傘下のチケット販売プラットフォーム「Songkick」を買収した。
しかし、ソニーはこのどちらの道も拒否した。その戦略的意図は明確である。個別和解はソニーだけにライセンス収入をもたらすが、裁判で「AI学習データへの著作権侵害」が認められれば、被告の2社だけでなく、すべてのAI音楽企業が学習前にライセンスを取得せざるを得なくなる。ソニーは、AI学習における著作権侵害の判例を確立することの戦略的価値が、個別の和解金よりも大きいと判断したとみられる。
この影響はソニーの財務諸表にとどまらない。著作権協会国際連合(CISAC)とPMPストラテジーがDeezerの協力を得て実施した調査によると、AI生成音楽によって2028年までにアーティストの年間収入が46億ドル(約7452億円、1ドル=162円換算)失われる可能性があると予測されている。
■音楽出版や他分野のAIツールへの波及効果
現在報道されているソニーの訴訟は、レコード会社が所有する「原盤権(音源の権利)」に関するものである。しかし、すべての音源の背後には「音楽著作権(作詞・作曲の権利)」という別の権利が存在し、これは音楽出版社や作曲家が保有している。
音楽出版分野での訴訟もすでに始まっている。2026年1月、ユニバーサル・ミュージック・パブリッシング・グループ、コンコード、ABKCOは、AIによる歌詞や楽曲構成の学習を巡り、Anthropicに対して30億ドル(約4860億円、1ドル=162円換算)の損害賠償を求める訴訟を起こした。
もし裁判所がAI学習にライセンスを義務付ける判決を下せば、その影響は音楽だけでなく、ChatGPTやClaudeなどのテキストAI、画像生成AI、動画生成AIなど、あらゆる生成AIシステムに及ぶ。
UMGがUdioとの和解で獲得したとされる「生成1回あたり0.002〜0.005ドル(約0.32〜0.81円、1ドル=162円換算)」というロイヤリティは、単体では少額に見えるが、膨大な生成量を誇るAIツールにおいては劇的なコスト増を意味する。同様のライセンス枠組みがテキストAIにも適用されれば、AIサブスクリプションの価格上昇につながる可能性がある。
2026年夏に予定されるセイラー首席判事の判決は、AI著作権法のすべてを解決するわけではないが、今後のAI企業とコンテンツ所有者との交渉、そしてAIユーザーが支払う利用料金の行方を大きく左右することになるだろう。
■注目ポイントQ&A
●米国の著作権法において、著作権で保護された音楽をAIに学習させることはフェアユース(公正利用)に該当しますか?
音楽分野において、この問いに対する明確な司法判断はまだ下されていません。2025年6月にカリフォルニア州の連邦地裁が、書籍を大規模言語モデルに学習させることはフェアユースに該当するとの判断を示しましたが、生成されたコンテンツが元の市場と直接競合する場合は結論が異なるとも指摘しています。2026年夏に予定されているソニー対Suno訴訟での判決が、AIによる音声学習の著作権に関する初の連邦地裁の判断となります。
●AIの学習データに関する著作権侵害の判決によって、AIサービスのサブスクリプション料金は値上がりしますか?
値上がりする可能性があります。裁判所がAI企業に対して学習データのライセンス取得を義務付けた場合、そのコストはユーザーに転嫁されるとみられます。ユニバーサル ミュージック グループとUdioの和解で合意されたとされる「生成1回あたり0.002〜0.005ドル(約0.32〜0.81円)」のロイヤリティは、毎日の膨大な利用数を掛け合わせると、AI製品のコスト構造を劇的に変化させます。
●ストリームリッピングとは何ですか?また、なぜこの訴訟において重要なのですか?
ストリームリッピングとは、YouTubeやSpotifyなどのストリーミングプラットフォームの技術的保護を回避し、無断で音声を直接ダウンロードするソフトウェア技術のことです。集団訴訟の修正訴状では、SunoとUdioがこの手法を用いて学習データを構築したと主張されており、通常の著作権侵害とは別に、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)の技術的保護回避禁止規定への違反として追及されています。
●ソニーがSunoとの訴訟で敗訴した場合、独立系アーティストはどうなりますか?
裁判所がAIによる音声学習をフェアユースと認めた場合、独立系アーティストによる集団訴訟の法的な根拠が失われることになります。大手レコード会社(ユニバーサルやワーナー)の和解契約には独立系アーティストへの補償は含まれておらず、彼らは集団訴訟に頼るしかないため、Sunoが勝訴した場合は実質的に救済手段を失うことになります。
元記事: AI Copyright Lawsuit Escalates: Firm Behind $260B Tobacco Deal Joins Suno and Udio Fight
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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