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磁力を使い神経幹細胞を誘導 パーキンソン病などの治療に期待 京大ら
京都大学・iPS細胞研究所などは7日、磁力を使って神経幹細胞の軸索が成長する方向をコントロールする技術を開発したと発表した。
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神経細胞は軸索を伸ばし、他の神経細胞が伸ばした軸索とシナプスを介して機能的に結合することで、神経回路を形成して機能する。
このため、神経細胞の軸索が成長する方向をコントロール可能となることで、パーキンソン病などの神経疾患に対する再生治療の有効性を高めることができるという。
■パーキンソン病とは?
パーキンソン病は中脳にあるドパミン神経細胞の数が減少し、ドパミンが減少することで発症する。主な症状はふるえ、動作緩慢などの運動障害だ。
2020年の厚生労働省の調査によると、日本国内におけるその患者数はおよそ29万人と推定されている。高齢になるほど発症率が高まるため、国内における患者数は増加傾向にあり、深刻な問題となっている。
治療法としては、現在は薬物療法が中心だが、近年、ドパミン神経前駆細胞の移植など再生治療にも注目が集まっている。
ただ再生治療の場合には、移植後に神経細胞の軸索を脳内の目的の場所まで伸ばし、神経回路を再建することが難しいなどの問題があった。
今回の研究成果はこの要請に応えるものである。
■磁力により神経幹細胞の軸索が成長する方向をコントロール
研究グループは神経幹細胞に磁性ナノ粒子を入れて、神経幹細胞を磁化。外部から磁力を加えることで、神経幹細胞に物理的な力を発生させ、任意の方向に軸索を成長させることに成功した。
研究グループはこの技術を「ナノプーリング」と名づけた。
研究グルーブによると、ナノプーリングはヒトiPS細胞由来のドーパミン前駆細胞に対しても有効であり、臨床に幅広く応用される可能性があるという。
磁性ナノ粒子と磁場はすでに臨床において診断や治療で広く使われている技術であり、ナノプーリングは臨床に応用しやすいのではないかとしている。
さらに研究グループは、ナノプーリングを長期間実施しても細胞の生存率や組織の安全性に影響がないことも確認した。
研究グループは今後、磁性ナノ粒子の最適化や他の神経疾患や神経の損傷の治療などへの応用などが期待されるとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)
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