リンクメッド、20.5億円調達 がん治療の放射性医薬品開発を加速

2025年4月12日 19:23

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建設中の工場完成予想図(画像:リンクメッドの発表資料より)

建設中の工場完成予想図(画像:リンクメッドの発表資料より)[写真拡大]

 リンクメッドは9日、第三者割当増資で20億5,000万円の資金調達を実施したと発表した。量子科学技術研究開発機構(QST)発のベンチャー企業で、銅の放射性同位体を用いた放射性医薬品の研究開発を推進している。今回はシリーズBセカンド・サードクローズで、2025年1月に行ったファーストクローズと合わせて35億5,000万円を調達。累計調達額は約47億円に達した。

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 同社の放射性医薬品は、銅の放射性同位体64Cu(カッパー64)を用いている。64Cuは、従来の治療薬に使われている放射線「ベータ線」に加え、「オージェ電子」という特殊な放射線も出す。

 オージェ電子は飛程が短く、正常組織への影響を抑制しつつ治療効果が見込めるとされ、核医学で注目を集めている。2種類の放射線を出す64Cuは、高いエネルギーでがん細胞のDNAを効果的に治療できるという。

 また64Cuは、抗体やペプチドなどのさまざまな分子との結合が容易で、がんの種類に合わせて患部に届きやすい医薬品を構築できる。さらに陽電子も放出するため、陽電子放射断層撮影(PET)診断で、治療薬が患部に集積しているかの可視化が可能。薬剤集積の状況を見ながら治療できるとしている。

 2018年10月には、国立がん研究センターなどの支援を得て医師主導で治験を開始。治験では、腫瘍内部が低酸素環境になることで治療抵抗性が生じ、従来手法では治療が難しい悪性脳腫瘍にフォーカス。23年6月まで臨床試験を行い治療効果や安全性を確認した。24年6月からは範囲を広げ、再発・難治性の悪性神経膠腫の患者を対象に治験を進めている。

 リンクメッドは、長年QSTで放射線を用いたがん治療薬の研究を手がけてきた吉井代表が、22年7月に設立した。日本政策投資銀行主催の「女性新ビジネスプランコンペティション」など、数々のビジネスコンテストを受賞するなどもあり注目され、23年12月にはシリーズAで総額6億8,000万円を調達。同時に、出資企業でもある東京大学発バイオベンチャーのペプチドリームと戦略的パートナーシップを組んだ。

 今回の出資には、慶應イノベーション・イニシアティブやロッテホールディングス、三菱UFJキャピタル、野村スパークス・インベストメントなどが新たに参画。ファーストクローズは、JICベンチャー・グロース・インベストメンツやDBJキャピタルなどが名を連ねている。

 出資金は、研究開発費や千葉市内で建設を進めている工場の運営費用、人材採用・組織機能の強化に充てられる。治験を進めながら研究開発を加速させ、国産の放射性医薬品の量産体制を構築していく方針だ。(記事:三部朗・記事一覧を見る

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