ヒーハイスト、25年3月末より株主優待制度を新設、半導体市場の成長を背景に直動機器の需要拡大へ

2024年12月20日 10:34

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 ヒーハイスト<6433>(東証スタンダード)は小径リニアボールブッシュの世界トップメーカーである。工作機械や半導体製造装置等に使用される直動機器を主力として、精密部品加工やユニット製品も展開している。成長戦略として自動化関連の需要増加に対応するため、直動機器の「スマート生産プロジェクト」の一環とする設備投資や開発投資を推進している。25年3月期は直動機器の需要回復遅れで赤字予想だが、中長期的には半導体製造装置関連などで直動機器の需要拡大が予想される。積極的な事業展開で26年3月期の収益回復を期待したい。なお株主優待制度を新設(25年3月末より実施)する。株価は株主優待制度新設を好感して急伸している。目先的にはやや過熱感だが、1倍割れの低PBRも評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■小径リニアボールブッシュの世界トップメーカー

 小径リニアボールブッシュの世界トップメーカーで、20年7月に商号をヒーハイスト精工から現在のヒーハイストに変更した。リニアボールブッシュは機械装置の稼働部に用いられる部品で、金属と金属の接触面を鋼球が転がりながら移動することで摩擦による影響を低減し、機械装置の寿命を延ばす役割を担っている。

 独自の球面加工技術や鏡面加工技術をコア技術として、工作機械や半導体製造装置等に使用されるリニアボールブッシュや球面軸受けなどの直動機器、レース用部品や試作部品の受託加工などの精密部品加工、液晶製造装置向けなどのユニット製品を展開している。直動機器の「スマート生産プロジェクト」の一環とする設備投資や開発投資を推進し、23年5月には埼玉工場の新工場A棟が稼働開始した。

 24年3月期の品目別売上高は、直動機器が生産力強化やタイムリーな納品対応により4.3%増の15億91百万円、精密部品加工がレース用部品の減少で21.4%減の5億29百万円、ユニット製品が設備投資関連の需要回復遅れで11.7%減の1億88百万円だった。主要販売先はTHK<6481>および本田技研工業<7267>である。収益面では産業機械・電子部品・自動車関連の設備投資動向の影響を受けやすく、設備投資関連のため四半期業績が変動しやすい特性もある。

■生産能力向上と採算性向上を推進

 経営ビジョンには「リニアブッシュ・アジアNO.1」を掲げ、成長に向けた基本戦略としては、フランジ増産および拡販によるシェア拡大を目指し、直動機器の「スマート生産プロジェクト」の一環とする設備投資や開発投資を推進している。

 事業別成長戦略としては、直動機器についてはスマート生産プロジェクトによる安定生産・原価低減、市場シェアの低い形番の生産増強によるシェア拡大、新製品(LMHB)の原価低減と販売数増加、システム化による納期対応強化、設備投資ピークアウト・減価償却費減少やコスト削減による利益率向上などを推進する。精密部品加工についてはホンダグループのモータースポーツ参戦のレース用部品供給継続によって収益を確保する。ユニット製品については仕様標準化による設計効率化、新製品NAF HWシリーズの拡販・ラインナップ拡充、海外市場への展開などを推進する。

 23年11月には、内閣府・中小企業庁並びに埼玉県などが推進する「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」の趣旨に賛同し、パートナーシップ構築宣言を公表した。23年12月には本社・埼玉工場のA棟建屋等に太陽光発電設備を設置した。

 24年4月には、世界に通用するドライバーの育成を目指しているホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)を支援し、HFDP with B―Max Racing Teamを応援すると発表した。また24年4月には、人的資本経営の取り組みの一環および株式市場での流動性向上を図ることを目的として、社員持株会の奨励金付与率を現行の5%から50%に引き上げると発表した。さらに社会貢献への取り組みの一環として、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパンのチャイルド・スポンサーシップを通じて国際協力活動を支援すると発表した。

 24年6月には企業の社会的責任(CSR)に対する取り組みを強化するため「ヒーハイストCSR活動方針」を策定した。24年8月には埼玉県の多様な働き方実践企業におけるプラチナランクの認証を受け、24年9月には埼玉県の多様な働き方実践企業におけるプラチナ認定企業紹介に同社の紹介が掲載された。24年11月には埼玉県SDGsパートナーとして登録された。

■資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

 23年3月末時点において流通株式時価総額がスタンダード市場の上場維持基準に適合しない状況となったため、23年6月27日付で上場維持基準適合に向けた計画書を作成・開示した。

 25年3月末までを計画期間として、中期経営計画で掲げた基本戦略および事業別成長戦略の着実な実行によって業績の向上を図るとともに、ESG経営、株主還元、IR活動も強化して企業価値の向上(株価上昇による時価総額向上)を図り、上場維持基準の適合を目指す方針としている。そして24年6月には計画の進捗状況をリリースした。24年3月末時点で流通株式時価総額がスタンダード市場の上場維持基準に適合していないが、引き続き各種取組を進めていくとしている。

 なお23年12月には「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」について、改善に向けた方針を決議・公表している。引き続き中期経営計画で掲げた重点施策の着実な遂行による業績の拡大、ROEの向上、生産・人的資本など成長投資の継続、株主還元の強化、IR活動の充実などを推進して企業価値の向上を目指すとしている。株主還元については27年3月期までに配当性向20~30%に強化する方針としている。また25年3月末より株主優待制度を新設する。

■25年3月期赤字予想だが26年3月期回復期待

 25年3月期の連結業績予想(11月12日付で下方修正)は売上高が24年3月期比2.3%減の22億57百万円、営業利益が1億15百万円の損失(24年3月期は1億58百万円の損失)、経常利益が1億20百万円の損失(同1億56百万円の損失)、親会社株主帰属当期純利益が91百万円の損失(同2億21百万円の損失)としている。配当予想は据え置いて24年3月期と同額の1円(期末一括、普通配当)としている。

 第2四半期累計(中間期)は売上高が前年同期比4.5%減の10億76百万円、営業利益が74百万円の損失(前年同期は96百万円の損失)、経常利益が74百万円の損失(同92百万円の損失)、親会社株主帰属四半期(中間)純利益が58百万円の損失(同64百万円の損失)だった。

 主力の直動機器の需要回復遅れで減収となり、固定費の増加等も影響して各利益は赤字だった。部門別売上高は、直動機器が中国市場の受注停滞の影響で16.0%減の6億94百万円、精密部品加工がレース用部品の増加で39.1%増の2億85百万円、ユニット製品が半導体・液晶製造装置向けの増加で1.5%増の96百万円だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が5億20百万円で営業利益が54百万円の損失、第2四半期は売上高が5億56百万円で営業利益が20百万円の損失だった。

 通期の連結業績予想は、前回予想(24年5月15日付公表の期初計画値)に対して、売上高を1億95百万円、営業利益を1億38百万円、経常利益を1億37百万円、親会社株主帰属当期純利益を1億04百万円それぞれ下方修正し、従来の黒字予想から一転して赤字予想とした。ただし中長期的には半導体製造装置関連などで直動機器の需要拡大が予想される。積極的な事業展開で26年3月期の収益回復を期待したい。

■株主優待制度を新設、25年3月末より実施

 12月4日に株主優待制度の新設を発表した。25年以降の毎年3月末日時点で1単元(100株)以上保有株主を対象にQUOカード3000円分を贈呈する。

■株価は急伸

 株価は株主優待制度新設を好感して急伸している。目先的にはやや過熱感だが、1倍割れの低PBRも評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。12月19日の終値は399円、今期予想配当利回り(会社予想の1円で算出)は約0.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS483円88銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約25億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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