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金星での水消失原因を解明へ 高層大気で重水素含む水が大幅に増加 東北大ら
今回の研究で提案された、金星上層の水循環の概念図(東北大学の発表資料より)[写真拡大]
金星は地球とほぼ同じ大きさだが、大気圧は地球の約100倍かつ表面温度は400度を超える灼熱地獄だ。金星と地球でこれほどまでに環境の違いが生じてしまった原因の1つに、水の消失が考えられている。
【こちらも】地球と同じ大きさなのに、金星の環境が全く異なる原因は? 米サウスウェスト研究所ら
東北大学は20日、ベルギー王立宇宙航空研究所などとの国際研究チームにより、金星の水の消失原因解明につながる可能性がある発見をしたと発表した。
今回の研究では、欧州宇宙機関(ESA)の探査機Venus Expressが金星で観測したデータの解析により、金星大気中の水蒸気とその同位体比(重水素を含む水分子の割合)が、高度70kmから100 kmにかけて劇的に増加することを発見した。
この事実は、従来考えられてきた金星大気循環機構(例えば金星表面では非常に遅い風速が、上空では100倍以上に跳ね上がることなど)だけでは説明がつかず、新たな金星大気循環メカニズム検討が必要となった。
惑星大気の水蒸気には、水分子と重水素を1個含む重水分子が含まれ、地球も金星も誕生当初はそれらの存在比率は同程度であったが、現在の金星上空70km以下の領域では、地球の120倍にも上る(金星上空大気のほうが重水素を含む水の量が比率が高い)。
また、通常の水分子も重水分子も金星上空では地球上空よりも高温にさらされ、太陽紫外線による水分子の破壊(光乖離)が起きる。つまり、水素も重水素も単独分子となり、簡単に宇宙空間へ散逸する。
だが水素は重水素よりも軽く、より散逸しやすい。このようなメカニズムで金星では重水素を含む水の比率が時間経過とともに高まったと、研究では結論付けている。
さらに研究では、金星上空70kmにおける重水素を含む水の比率と比べ、金星上空100kmにおけるそれはさらに10倍以上に跳ね上がり、現在の地球の海洋で見られる比率の1500倍以上に達することが初めて明らかにされた。
地球上では深海の熱水噴出孔で生命の存在が確認されており、最初の生命はそこで誕生したとする説もある。金星表面は地球の熱水噴出孔と環境の類似性があるため、ひょっとしたら生命が誕生しているかもしれないとの説もあることを、付記しておく。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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