DNAの切断を修復する仕組み解明 がんの原因解明・治療に期待 東大ら

2024年3月22日 19:19

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今回の研究の概要(画像:東京大学報道発表資料より)

今回の研究の概要(画像:東京大学報道発表資料より)[写真拡大]

 東京大学、科学技術振興機構などは21日、放射線などによって切断されたDNAが修復されるメカニズムを解明したと発表した。

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 DNA修復たんばく質RAD51がどのようにしてDNAの切断を修復するのか、これまでは不明だったが、今回、研究グループはそのメカニズムを解明した。

 DNAの切断は発がんにつながるDNAの重篤な損傷であるため、今回の研究成果は、発がんのメカニズム解明やその治療法の確立に貢献することが期待されるという。

■これまで不明だったDNAの切断が修復されるメカニズム
 私達のDNAは、放射線などにより切断されることがある。このようなDNAの切断は発がんにつながる重篤な損傷だ。

 そのため、DNAの切断は正確に修復されなければならないが、このとき重要な働きをするのがDNA修復たんぱく質RAD51だ。

 しかしDNAは、ヒストンと呼ばれるたんぱく質に固く巻き付いている。そのためどのようにしてRAD51がDNAの切断を修復するのかこれまで不明だった。

■RAD51がDNAの切断を修復するメカニズムを解明
 研究グループは、クライオ電子顕微鏡と呼ばれる特殊な電子顕微鏡を使い、RAD51とヒストンに巻き付いた状態のDNAを立体的に観察。RAD51がDNAの切断を修復するメカニズムを解明した。

 まずRAD51は、リング状になってヒストンに巻き付いた状態のDNAに結合し、N末端ドメインと呼ばれる領域を使ってDNAの切断を検知。その後、らせん状になってヒストンからDNAを引き剥がしながら、切断された箇所を修復する。

 これまでN末端ドメインの機能はよくわかっていなかったが、今回研究グループはあわせて解明した。

 なおN末端ドメインは、DNAをヒストンに巻き付けて核内にコンパクトに収納している真核生物にだけみられるもので、このようなDNAの収納方法をとっている真核生物がDNAの切断を検知するため、進化の過程で獲得したものであると考えられるという。

 N末端ドメインについては、多くのがん患者で変異が生じていることがわかっている。そのため研究グループによれば、N末端ドメインに変異が生じることで、RAD51が上手くDNAの切断を修復できなくなることが、発がん原因の1つであることが示唆されという。

 今回の研究成果は、発がんのメカニズムの解明やその治療法の確立に貢献することが期待されるとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る

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