加齢により筋肉が萎縮し固くなる根本的な原因を解明 若返りも視野に 九大

2023年11月26日 08:30

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今回の研究の概要(画像: 九州大学の発表資料より)

今回の研究の概要(画像: 九州大学の発表資料より)[写真拡大]

 九州大学は21日、加齢により筋肉が萎縮し柔軟性も低下する根本的な原因を解明したと発表した。筋幹細胞を活性化する働きがあるHGFと呼ばれるタンパク質が加齢によりニトロ化し活性を失うことが、その根本的な原因だという。

 研究グループによれば、ニトロ化したHGFの脱ニトロ化の方法を開発できれば、若返りも夢ではないという。

■HGFのニトロ化と加齢関連疾患

 歳を取ると、加齢性筋萎縮症、アルツハイマー症、パーキンソン病、動脈硬化、がん等さまざまな病気にかかりやすくなる。

 現在、このような加齢関連疾患の発症・悪化に、HGFのニトロ化が深く関与していることが指摘されている。なお、ニトロ化とはタンパク質等の一部がニトロ基(NO2)に置き換わる化学反応をいう。

 研究グループは、これまで骨格筋の肥大・再生に欠かせない筋幹細胞の活性化について研究を進めてきたが、今回、ニトロ化したHGFに特異的に結合する抗体(蛍光する機能がある)を開発し、ニトロ化したHGFの可視化に成功。HGFのニトロ化が、加齢による筋肉の萎縮と柔軟性の低下の根本的な原因であることを突き止めた。

■加齢により筋肉が萎縮し柔軟性も低下するメカニズム

 HGFは、筋幹細胞にくっつき筋幹細胞を活性化する。すると筋肉が肥大・再生する。

 ところがHGFは、ニトロ化すると筋幹細胞にくっつくことができなくなる。その結果、筋幹細胞は活性化することができなくなり、筋肉は萎縮し柔軟性も低下する。

 そのため、加齢によりニトロ化したHGFが増えていくと、筋肉が萎縮し柔軟性も低下していくというわけだ。

 HGFのニトロ化は他にもアルツハイマー症、パーキンソン病、動脈硬化、がん等加齢関連疾患の発症・悪化に深く関与していると考えられており、ニトロ化したHGFを脱ニトロ化できれば、これらの加齢関連疾患の予防のみならず、積極的な治療にもつながる可能性がある。

 研究グループでは今後、「酸化ストレスにより変性した機能を蘇えらせる(若返り)」というコンセプトの下に、脱ニトロ化酵素関連遺伝子の特定や発現誘導等について強力に研究を進めていきたいとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る

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