関連記事
ハリガネムシが寄生するカマキリを入水させる仕組み、遺伝子レベルで解明 京大ら
今回の研究の概要(画像: 京都大学の発表資料より)[写真拡大]
京都大学や理化学研究所は20日、寄生虫のハリガネムシが宿主のカマキリを操って川や池に入水させる際に、ハリガネムシがカマキリから獲得した遺伝子が関係している可能性があることを明らかにしたと発表した。
【こちらも】東京都内でカタツムリに寄生する新種の寄生虫を発見 東邦大の研究
ハリガネムシがカマキリを操って入水させる現象は、100年以上前から知られていたが、遺伝子レベルでの詳しいメカニズムについてはこれまで謎に包まれていた。
■宿主操作とは?
生物の約40%は寄生生物であり、全ての野生動物は少なくでも1種類の寄生生物に寄生されているといわれているが、ときに寄生生物は自分に都合がいいように宿主の行動を操作することがある。これを宿主操作という。
例えば、トキソプラズマは、ネズミのネコに対する捕食回避行動を抑制し、ネズミがネコに捕食されやすくする。こうすることでトキソプラズマは宿主をネズミからネコに変えることができる。
ハリガネムシもカマキリを繁殖場所である川や池に入水させる。泳げないカマキリは、溺れ死んだり、魚のエサになったりするが、ハリガネムシは繁殖し子孫を残すことができる。
だがハリガネムシがどのようにしてカマキリを操作しているのか、その遺伝子レベルでの詳しい仕組みについては、これまで謎に包まれていた。
■カマキリから獲得した遺伝子を使い操る
今回、研究グループは、系統的にはかなり異なる、ハリガネムシとカマキリの間によく似た遺伝子が多数存在していることを発見。ハリガネムシがカマキリを操作中にこれらの遺伝子が強く活性化していることを突き止めた。
これらの遺伝子には、水面からの反射光に引き寄せられる習性に関係すると指摘されている遺伝子や、動物の行動に影響を及ぼす神経修飾物質(生体アミン)に関係する遺伝子等が含まれている。
なお、カマキリがハリガネムシに操られて入水するのは、水面からの反射光(水面偏光)に強く引き寄せられるからだと考えられている。
研究グループによれば、ハリガネムシはカマキリとよく似た遺伝子を使い、カマキリがつくる分子とよく似た分子をつくることで、カマキリを操っている可能性があるという。
研究グループでは、カマキリの遺伝子がハリガネムシに伝播したと考えているが、このような伝播が多細胞生物間で起こることは稀だという。今後、どのような仕組みでこのような伝播が起こるのか、そしてその後、どのように進化し、どのように宿主操作において機能しているのか、詳しく解明していきたいとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)
スポンサードリンク
関連キーワード