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イギリス英語のスラング特集 (13) アメリカでは聞かないイギリスらしいフレーズ
イギリス英語のスラングを長きにわたって紹介し続けているが、今回紹介するスラングは非常にイギリスらしいと言ってよい。アメリカではまず聞かれないし、意味が通じないこともあるが、イギリスではどちらも日常的に使用されている。例文と一緒にチェックしておこう。
【前回は】日常でよく見聞きする! イギリス英語のスラング特集 (12)
■Nick
一般的に「nick」と言えば、「小さな傷」や「傷をつける」といった名詞・動詞だ。ところが、イギリス英語のスラングとしての「nick」にはそれとは違う意味がある。
たとえば、「My coat got nicked on the subway!」と言われたら、どう解釈すればよいだろうか。「nick」を傷の意味で考えると、コートに傷がついたと思うかもしれない。しかしこう言われると、だいたいのイギリス人は「地下鉄でコートが盗まれた!」と解釈するのだ。
つまり、スラングとしての「nick」は、「盗む」という意味の動詞で使われるということである。また、「to get nicked」は、先の例のように「盗まれる」という意味だが、文脈によっては「逮捕される」という意味にもなる。
He tried to outrun the police, but he got nicked.
(彼は警察から逃げようとしたが、逮捕された。)
また、「nick」は名詞にもなる。その場合の意味は「刑務所」だ。由来ははっきりしないが、おそらく、刑務所に入れられることは自由が「盗まれる」ようなものだから、そこからの連想で「刑務所」の意味でも使われるようになったのだろう。
He made bad decisions and now he's doing time in the nick.
(彼は間違った選択をした結果、今は刑務所で服役している)
■On it like a car bonnet
おもに「I'm on it like a car bonnet」の形で使われるフレーズだが、「I'm on it」と同じ意味だ。「like a car bonnet」の部分に意味はない。
「I'm on it」は英語学習者にもポピュラーなフレーズだろう。直訳すると意味がわからないが、これは「今取りかかっている」、「今やっている」という意味の口語表現である。
「I'm on it」はアメリカ英語でもよく使われる表現なのだが、「like a car bonnet」をつけることで途端にイギリスらしいフレーズになる。なお、「bonnet」とは車のボンネットのことだ(アメリカ英語では「hood」)。
では、なぜ「I'm on it」に「like a car bonnet」と続けるのかと言うと、これは単なるダジャレである。「on it」と「bonnet」が韻を踏んでおり、かつ、「I'm on it」と「car bonnet」はシラブルとアクセントの位置も一致している。
だから「I'm on it like a car bonnet」と口にすると、リズムがよくて、言っていて気持ちがいいのである。それだけのことだが、おもしろい言い回しなので好んで使う人がいるのだ(ただし、イギリス人のなかにも知らない人はいる)。
Are you sure you've got everything ready for the party tonight?
(今夜のパーティーの準備、大丈夫か?)
Don't worry, I'm on it like a car bonnet!
(心配するな、ちゃんとやってるよ)(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る)
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