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車や建物自体を蓄電池に 新しい3Dカーボン材料開発 東北大
階層的多孔質カーボンマイクロラティスの外観と電子顕微鏡での写真。(a)造形後・炭素化後・MgO ナノ粒子脱離後の各段階での試料の外観。(b)走査電子顕微鏡と透過電子顕微鏡による4段階の多孔質構造の写真。(画像: 東北大学の報道発表資料より)[写真拡大]
東北大学は23日、車や建物自体を蓄電池として利用可能にする3Dカーボン材料の開発に成功したと発表した。実用レベルの強度と容量をあわせもつという。
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研究グループによれば、再生可能エネルギーを有効活用し、持続可能な社会を実現するために、現在注目されている「構造的エネルギー貯蔵」の実現に貢献することが期待されるという。
■構造的エネルギー貯蔵とは?
発電量が不安定な再生可能エネルギーを有効活用するためには、蓄電池が欠かせない。現在、その主役を担っているのはリチウムイオン電池であるが、重く、場所も取る。
例えば、一般的な電気自動車に搭載されるリチウムイオン電池の重量は500kgに迫り、電気自動車の重量をガソリン車よりも100kgも重くしてしまっている。
もし自動車の車体、飛行機の機体、建物の壁・柱などそのものを蓄電池にできれば、軽量化、省スペース化につながるだろう。このようなアイデアを構造的エネルギー貯蔵という。
そして現在、この構造的エネルギー貯蔵の実現に向けて盛んに研究開発が進められている。
ただこれまで研究が進められてきたカーボンファイバー強化プラスチックをベースにした材料は、強度に優れているものの、加工が難しいなどの難点もある。
■実用化に耐える強度・容量の3Dカーボン材料を開発
研究グループは、酸化マグネシウム(MgO)ナノ粒子を加えた複合材料樹脂を、光造形3Dプリンターで格子状に形成。その後、熱処理して炭素化。さらに塩酸で処理し、今回の3Dカーボン材料(階層的多孔質カーボンマイクロラティス)を得た。
今回開発されたこの材料は、ほぼ炭素でできているために、軽く強靭で高い容量を持つという。
研究グループによれば、機械的強度は、圧縮強度7.45-10.45MPa・ヤング率375-736MPa。また容量は、水系・有機系電解質でそれぞれ電極面積あたり最大容量11.5F・cm-2および1.5 F・cm-2を達成した。
さらに加工の自由度も、これまでよりも高いという。
研究グループでは今後、ドローンの機体やモバイル機器の筐体などとして使用できるサイズを目標に大型化を図り、実用化を目指していきたいとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)
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