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TSMCの熊本新工場が、24年に操業を開始するので・・・(上)
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今、九州が熱い。当然のことだが、初夏だから暑いのではない。Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(TSMC)が、ソニーセミコンダクタソリューションズと共に、熊本県に新工場を建設中だからだ。
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現在の世界は半導体なしでは成り立たない。電気を使用する製品で半導体なしで使用されるものは数少ない。スマホから自動車も家電製品も、社会的なインフラそのものも、半導体抜きでは考えられないほど日々の生活に不可欠な存在になっている。
20年のはじめ頃から、新型コロナの感染拡大が外出の制限やテレワーク・リモート授業の拡大につながり、通信機器やパソコンの需要が急増した。
外出を控えて自宅で過ごす時間が長くなれば、ゲーム機に親しむ人も増える。需要が拡大したために、当時大人気だったソニーの「プレステ5」が、半導体不足の煽りを受けた品薄状態に陥り、転売ヤーの活躍するところとなったのは記憶に新しい。
半導体が不足したのは、需要が増加したためだけではない。20年12月に米中対立が鮮明化して貿易取引が急速に不自由になったことや、20年10月には旭化成の宮崎工場、半年後の21年3月にはルネサスの茨城工場に相次いで火災が発生し、供給量が大幅に減少したことも災いした。
TSMCが海外工場の立地場所として、中国と米国に続いて日本を選択した理由は輻輳している。米中対立という地政学的なリスクを回避することは勿論だが、半導体製造工程における日本企業の高度な技術力が、判断の大きなポイントであったことは間違いない。
半導体の製造工程は数え方によって400工程とも600工程ともいわれるが、TSMCが独壇場にしている前工程と、ウエハの切断以降の後工程に分けると分かり易い。
日本にはTSMC並みに微細な線幅で回路を描ける企業は存在しないが、その前後には日本企業を抜きに考えられない工程がいくつもある。だから既に関連工場の集積が進んでいる中国や米国を除くと、立地に相応しい国は限られているという訳だ。
TSMCは半導体の注文を受けて、製造だけを行うファウンドリー(製造受託企業)でしかない。一般的には「下請け」と称される存在で、自社工場を持たずに必要とする半導体を発注する、米アップルのような「ファブレス企業」を大事な拠り所としていた(続く)。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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