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暗黒物質の分布推定から宇宙誕生標準理論を検証 理論に綻びか? 東大らの研究
宇宙がビッグバンで誕生したことは今や小学生でも知っている。だが、実は宇宙誕生理論は複雑だ。
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宇宙誕生以前は何もない世界で、素粒子よりも小さな微小宇宙が、泡粒のように無数に現れては消えるという状況だった。この揺らぎの中で泡粒宇宙のうちの1つが、何らかの原因で急激に成長したのが現在の宇宙だと考えられている。膨張は10の34乗分の1秒という極めて短時間で起き、これをインフレーションと呼ぶ。
そして最初の3分間で全ての素粒子の元が生まれ、約38万年間は宇宙空間に電子が充満。濃い霧のようになり、光が直進できない状況だった。やがて霧が晴れわたり、光や電磁波が宇宙空間を飛び交うことが可能になり、人類が直接観測できる状況になった。
3K波と呼ばれる宇宙マイクロ波背景放射は、宇宙誕生から38万年後に発せられた電磁波に他ならない。この時に存在した宇宙空間分布の凸凹を発端として、宇宙にはごく僅かな密度の濃淡が生じ、星や銀河が生まれ、現在の状況にまで進化したというのが宇宙誕生標準理論だ。
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)は4日、国際研究チームが行ったすばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラによる大規模撮像探査(HSC-SSP)の解析により、暗黒物質(ダークマター)の分布を精密に測定し、宇宙の標準理論を検証したと発表した。
解析に用いたデータは、HSC-SSPにより2021年までの8年間に実施した大規模な宇宙空間の撮像探査データのうち、3年間分(約2500万個の銀河の形状を精査)だ。
重力レンズ効果による暗黒物質の分布を推定して、現在の宇宙構造形成の進行度合いを表す物理量S8を導出。その値は0.76で、宇宙マイクロ波背景放射の測定で得られた宇宙誕生から38万年後の値を、宇宙誕生標準理論に基づき現在値に換算した値0.83と比べ、約1割小さいこと突き止めた。しかもこれらの相違が測定誤差である可能性は5%しかないという。
この事実は、宇宙誕生標準理論に何らかの綻びがある可能性を示唆し、標準理論の見直しに繋がるかも知れない。宇宙は誕生して38万年後以降、人類が未知のメカニズムで進化を遂げた可能性が出てきたのだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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