EUがガソリン車の販売禁止方針を転換 EV推進は骨抜きになる? (1)

2023年4月1日 11:28

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 3月28日、欧州連合(EU)はエネルギー相理事会を開催し、2035年に「原則として」ゼロエミッション車( EVなど)以外の販売を禁じることで正式に合意した。「原則」があれば「例外」もある。今回の例外とは、地球温暖化効果ガスの排出をゼロとみなす合成燃料を利用するのに限って、販売を認めるということだ。

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 合成燃料とは、原料に二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を合成して製造されるガソリン代替燃料で、合成時にCO2を原料としているので、燃焼時に発生するCO2と相殺されるという発想だ。ニュース解説では、現在の技術では生産コストが高くなり商用化が微妙だとされている。

 最大のポイントは、合成燃料がガソリンの代替になり、ガソリンも合成燃料の代替になることだ。

 2022年10月に欧州理事会と欧州議会、欧州委員会が到達した合意は、「ガソリン車など内燃機関車の販売を事実上禁止する」で、世界の自動車業界の潮流が一気に電気自動車(EV)へと向かうトドメの動きだった。

 2035年になったら、現在販売されているガソリン車は販売が禁止されるものだと思っていたら、合成燃料を利用するという名目を付して販売することが可能になる。購入時には合成燃料を利用するつもりがあってもなくても、合成燃料を利用するという建前があれば、メーカーはガソリン車を販売できて、ユーザーも問題なく購入できる。購入した後に、気が変わってガソリンを利用しても止めることはできないから、実質的には現在と変わら図、EUの決定は骨抜きになるということだ。

 自動車業界が一斉にEV化へと舵を切ったのは、「販売できなくなったら、事業が行き詰まる」ことが明白だからだ。

 もともと、2035年になっても所有していたガソリン車の利用が禁止されるわけではないから、5~10年程度の移行期間は想定されていた。

 あえて付け加えるならば、こうした規制を考えるのはある程度の成長過程に到達した先進国だけで、世界の大勢を占める開発途上国は手軽なガソリン車を求め、原油のみが経済資源の産油国はなんと言われても原油販売を継続するだろう。ガソリンを使える環境にあるのに、理屈をつけてガソリンを規制するのは、日々の生活に余裕がある国だけに許された「特権」なのではないのか。(続く)(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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