月が地球温暖化を防止するかもしれない ユタ大の研究

2023年2月15日 15:26

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アポロ16号の月着陸船オリオン。多くの塵も見える。(c) NASA

アポロ16号の月着陸船オリオン。多くの塵も見える。(c) NASA[写真拡大]

 地球温暖化は世界各地で大洪水や干ばつなどの異常気象をもたらし、人類に甚大な被害を及ぼす原因となっており、21世紀に入りますます深刻化してきている。これを回避するため、塵を利用して、太陽光を遮断することで地球温暖化防止を図るための研究が、ユタ大学の科学者らによって進められている。

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 ユタ大学の科学者らは、宇宙空間に放った塵により太陽光を遮る日陰を作り、それによってどのくらい地球温暖化防止効果が見込めるのか試算を試みている。この研究の重要なポイントは、塵を宇宙空間のどのあたりにどうやってどの程度の量で放てば、効率が良いかを明らかにすることだ。

 太陽放射を遮断する量は、全太陽放射量の1~2%で事足りるが、それを実現するためには、太陽光を遮る位置に効果的に塵を放つ必要がある。その場合、塵が太陽光を遮る場所に継続的にとどまらせるためには、地球と太陽のラグランジュポイントに塵の集積地を配置するのが効果的だという。

 ラグランジュポイントとは、地球が太陽の周りを公転している際に、これらと比較して極めて小さな第3の天体が安定してとどまることのできる、重力バランスの平衡ポイントを指す。

 だが地球から塵を宇宙空間にあるラグランジュポイントに運び込むシミュレーションを実施したところ、運ぶのは可能だが、そこに継続的にとどまらせるのは太陽風などの影響があり、不可能であることが判明した。そこで考案されたのが、月の表面にたくさん存在している塵を利用する考えだ。

 月から太陽に向けて塵を発射すれば、ラグランジュポイントに到達させることができなくとも、太陽放射を継続的に遮断することが可能だという。これは土星の輪をイメージするとわかりやすい。

 月から発射された塵は時間の経過とともに地球の引力に引き寄せられ、地球を周回する輪を形成する。土星の輪が長期間消失しないように、月の塵で構成された地球の輪が長期間にわたり、太陽光を適切に遮断してくれるのだ。

 なお本研究に関する論文は、2月8日にジャーナルPLOS Climateに掲載されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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