【どう見るこの株】シイエヌエスは底値圏、23年5月期は先行投資で小幅減益予想だが中期成長期待

2023年1月30日 15:53

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 シイエヌエス<4076>(東証グロース)は独立系のシステムインテグレータとしてシステムエンジニアリング事業を展開し、DX変革ビジネスの成長領域と位置付けているデジタル革新推進事業、ビッグデータ分析事業、システム基盤事業を主力としている。さらに10年後を見据えたグループの方向性として、持続的な成長と中長期的な企業価値(経済価値+社会価値)の向上を目指し、成長戦略として事業基盤の強化、新たな取引先の拡大、技術サービスの拡充を推進している。23年5月期は人材採用・育成など先行投資の影響で小幅減益予想としている。ただし売上面は成長領域が牽引して増収基調である。積極的な事業展開と先行投資の成果で中期成長を期待したい。株価は地合い悪化も影響して上場来安値圏だが、売り一巡してほぼ底値圏だろう。中期成長力を評価して出直りを期待したい。

■独立系のシステムインテグレータ

 独立系のシステムインテグレータとしてシステムエンジニアリング事業を展開している。21年8月に東証マザーズに新規上場、22年4月の市場区分再編に伴って東証グロース市場に移行した。グループは同社および連結子会社のシイエヌエス北海道の2社で構成されている。

 サブセグメントとしての事業区分は、DX変革ビジネスの成長領域と位置付けているデジタル革新推進事業、ビッグデータ分析事業、システム基盤事業、創業以来築いてきた事業基盤で安定領域と位置付けている業務システムインテグレーション事業としている。なおシステム基盤事業については、従来はクラウド基盤とオンプレミス基盤に分類していたが、企業のクラウドシフト進行に伴い23年5月期から統合した。

■成長領域のDX変革ビジネスが主力に成長

 22年5月期の事業別売上高は、デジタル革新推進事業が11億84百万円、ビッグデータ分析事業が9億45百万円、システム基盤事業が18億84百万円(クラウド基盤が11億44百万円、オンプレミス基盤が7億40百万円)、業務システムインテグレーション事業が14億05百万円だった。成長・安定領域別の売上構成比は成長領域が60%、安定領域が40%だった。成長領域が主力に成長している。

 22年5月期の事業別売上総利益は、デジタル革新推進事業が3億13百万円、ビッグデータ分析事業が2億82百万円、システム基盤事業が4億24百万円(クラウド基盤が2億52百万円、オンプレミス基盤が1億72百万円)、業務システムインテグレーション事業が3億01百万円だった。成長・安定領域別の売上総利益構成比は成長領域が64%、安定領域が36%だった。売上面と同様に、利益面でも成長領域が主力に成長している。

 22年5月期の元請(エンドユーザーとの直接取引)比率は約40%、二次請(SI事業者やベンダ経由の間接取引)比率は約60%となっている。エンドユーザーの業種別売上構成比は金融が約30%、通信が約20%、公共が約20%、小売・流通が約10%などとなっている。

■事業の概要・特徴と主要取引先

 成長領域のデジタル革新推進事業は、NTTデータが取り扱う米ServiceNow社製の企業向けサービスマネジメントクラウドServiceNow(ワークフローを中核とした各種業務アプリケーションをクラウドで一元管理するプラットフォーム)の導入支援サービスを主力としている。NTTデータから優良ビジネスパートナー企業の認定を受け、NTTデータと共同で拡販を推進している。このためNTTデータ向け売上高が増加基調となっている。また、ServiceNowのパートナー国内認定企業のうち、上位20数社に入るプレミアランクの認定パートナー(22年3月にランクアップ)となっている。なお22年5月期のServiceNow関連売上高は前期比54.9%増の5億73百万円だった。

 ビッグデータ分析事業は、ビッグデータ分析および予測モデル構築を行い、データ分析に基づいた顧客企業の課題解決に向けた提案、顧客企業が自社で分析業務を行うための技術支援サービスを提供している。法規制対応などでAML(アンチ・マネーロンダリング)分野の需要が増加基調であり、SAS Institute Japanからパートナー企業への発注金額において、同社が2位のポジションとなっている。さらにビッグデータを活用して、大手通信キャリア(NTTドコモ、au)等のマーケティングに貢献している。

 システム基盤事業(クラウド基盤)では、AWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureなど、クラウドサービス事業者が提供する機能を活用し、顧客企業に適したクラウド基盤の設計および導入支援サービスを提供している。22年12月には、オラクルのクラウドサービスOCI(Oracle Cloud Infrastructure)の導入・運用支援の強化・促進に向けて、OCI専用の新サービス「U-Way」の提供を開始した。オンプレミス環境からクラウドへのシフトを支援する。

 なおオンプレミス基盤については、クラウドサービスの普及に伴ってクラウド基盤への移行が進むと予想されているが、一方で、金融機関等の大規模システムを保有する企業においては、機密性や安全性を優先して今後もオンプレミス基盤を継続採用することが予想されている。このため今後も中核事業として、パートナーであるNTTデータや野村総合研究所とともに事業展開する方針としている。

 安定領域の業務システムインテグレーション事業は、システム受託開発によって顧客企業の業務システムの初期検討~開発・導入~運用まで全般をサポートする事業である。特に金融業界の信用リスクや金融規制対応、流通業界の顧客管理や販売管理などの分野に豊富な実績を有している。

 22年5月期の主要取引先向け売上高は、NTTデータグループ向けが20億51百万円(全社売上高に占める割合37.8%)、野村総合研究所グループ向けが12億69百万円(同23.4%)、生活協同組合コープさっぽろグループ向けが4億97百万円(同9.2%)、SAS Institute Japan向けが3億03百万円(同5.6%)などとなっている。

■成長戦略として企業価値(経済価値+社会価値)の向上を目指す

 10年後を見据えたグループの方向性としてグループ全体の持続的な成長と中長期的な企業価値(経済価値+社会価値)の向上を目指し、成長戦略として事業基盤の強化、新たな取引先の拡大、技術サービスの拡充を推進している。

 目標とする経営指標には、経済価値の高いサービスの展開により、10年後(32年5月期)の売上高150億円(既存事業100億円+新規事業50億円)を掲げている。

 経済価値の向上では、既存事業のシステムエンジニアリングサービスでデジタルシフト・上流工程への拡大を推進するとともに、新規事業として25年に事業本格化を目指すビジネス変革デザインサービス、27年に事業本格化を目指すテクノロジー教育サービス(トレノケート社との協業)、28年に事業本格化を目指す運用統制支援サービス/ビジネス運用サービスの拡大を推進する方針だ。ビジネス変革デザインで顧客の多様なニーズに応え、経営戦略の実現をサポートする。

 事業基盤強化に向けた重点施策としては、体制の強化(優秀な人材の獲得、技術変化への対応力強化のための社員育成など)を推進する。なおエンジニア数は22年5月期末時点で21年5月期末比18名増加の186名となった。そして23年5月期末時点では22年5月期末比28名増加の214名の計画としている。

 新たな取引先拡大に向けた施策としては、重点顧客との連携強化(ServiceNow導入コンサルティング・構築支援の増強など)や、アライアンスパートナーとの協業関係強化(SAS Institute Japanや日本オラクルとの連携強化など)を推進する。

 技術サービス拡充としては、成長領域(DX変革ビジネス)に関わる主力ソリューションの拡充(クラウド技術をベースにした新ソリューションIaaSサービスの開発など)や、次なるデジタル変革ソリューションとしての新サービスの開発・市場化(ビジネス変革へのデジタル技術活用策を提言するDXコンサルティングサービス、データベース技術のコンサルティングサービス、22年6月に業務提携したトレノケート社との協業による教育関連サービス事業化など)を推進する。

 社会価値の向上では、企業理念に「情報技術の先進的活用により顧客企業と社会の発展に貢献する」を掲げ、事業活動を通じて「人を想い、社会を進化させる新価値を生み出すソリューションを提供」するとともに、地球環境保全、多様性に富んだ人財確保・育成、働き方改革を推進し、社会価値の持続的な向上を目指すとしている。

 そして新たな方針として「Creating New value for Sustainable~持続可能な新しい価値の創造」を掲げ、22年11月にサステナビリティ基本方針を策定・公表した。マテリアリティの特定および目標設定は23年5月期中に公表予定としている。また、CDP(Carbon Disclosure Project)による気候変動に関するアンケートへの対応を開始する。

■23年5月期小幅減益予想だが中期成長期待

 23年5月期連結業績予想は、売上高が22年5月期比11.7%増の60億55百万円、営業利益が0.8%減の5億28百万円、経常利益が8.5%減の5億44百万円、親会社株主帰属当期純利益が9.7%減の3億69百万円としている。

 配当予想は22年5月期比15円減配の30円(期末一括)としている。なお22年5月期の45円には上場1周年記念配当15円が含まれているため、普通配当ベースでは22年5月期と同額となる。予想配当性向は23.6%となる。利益還元については継続的かつ安定的な配当を基本方針として、配当性向30%を目指すとしている。

 事業別計画として、デジタル革新推進事業は売上高が24.1%増の14億69百万円で売上総利益が8.6%増の3億40百万円、ビッグデータ分析事業は売上高が21.9%増の11億52百万円で売上総利益が12.8%増の3億18百万円、システム基盤事業(統合後)は売上高が7.6%増の20億27百万円で売上総利益が14.6%増の4億86百万円、業務システムインテグレーション事業は売上高が横ばいの14億05百万円で売上総利益が10.6%増の3億30百万円としている。なおデジタル革新推進事業のServiceNow関連売上高は22.2%増の7億円の計画としている。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比5.2%増の28億45百万円、営業利益が9.2%減の2億68百万円、経常利益が16.9%減の2億84百万円、親会社株主帰属四半期純利益が18.1%減の1億90百万円だった。売上面はデジタル革新推進事業とビッグデータ分析事業が牽引して増収だが、利益面は前年同期の高利益率案件の反動、人材採用・育成(人件費、教育研修費、採用費)や組織力強化に向けた社内ブランディング施策(コンサルティング費用)など先行投資の影響で減益だった。

 デジタル革新推進事業は、売上高が29.3%増の7億10百万円で売上総利益が21.4%増の1億81百万円だった。企業のDX投資が高水準に推移し、主力のServiceNow関連の売上が大幅伸長している。ビッグデータ分析事業は、売上高が27.6%増の5億68百万円で売上総利益が29.1%増の1億72百万円だった。主に既存顧客向けのコンサルティング案件が増加した。システム基盤事業は、売上高が5.5%減の9億15百万円で売上総利益が10.0%減の2億05百万円だった。クラウド基盤で顧客都合による案件中止・開始遅延が影響した。なお新サービス「U-Way」は複数の新規案件を獲得した。業務システムインテグレーション事業は、売上高が12.3%減の6億50百万円で売上総利益が14.1%減の1億46百万円だった。顧客都合(内製化)による案件終了、デジタル革新推進事業への戦略的人員シフトなどが影響した。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が14億01百万円で営業利益が1億05百万円、第2四半期は売上高が14億44百万円で営業利益が1億63百万円だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。売上面は成長領域が牽引して増収だが、利益面は人材採用・育成や経営効率化に向けた社内システム導入など先行投資の影響で小幅減益予想としている。第2四半期累計の進捗率は売上高が47.0%、営業利益が50.8%、経常利益が52.2%、親会社株主帰属当期純利益が51.4%と概ね順調だった。事業別にはシステム基盤事業と業務システムインテグレーション事業の進捗率がやや低水準の形だが、デジタル革新推進事業とビッグデータ分析事業が順調に推移している。さらに下期から開始されるプロジェクトが多数あり、通期は全体として計画どおりの着地を見込むとしている。

 23年5月期は人材採用・育成など先行投資の影響で小幅減益予想としている。ただし売上面は成長領域が牽引して増収基調である。積極的な事業展開と先行投資の成果で中期成長を期待したい。

■株価は底値圏

 株価は地合い悪化も影響して上場来安値圏だが、売り一巡してほぼ底値圏だろう。中期成長力を評価して出直りを期待したい。1月27日の終値は1340円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS127円19銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の30円で算出)は約2.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1045円69銭で算出)は約1.3倍、そして時価総額は約39億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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