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日銀がサプライズで、思わぬ存在感を発揮 期待されるのは、今後の政策?
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日本銀行は20日の金融政策決定会合で、長期金利に設定されていた上限の目処を±0.25%程度から±0.5%程度に引き上げた。
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本来、日本銀行が開催する「金融政策決定会合」は、決定された金融政策が内外の経済に及ぼす影響の大きさ故に、注目を集める重要会合だった。2022年も1月から12月までの間、2月、5月、8月、11月を除く8回の会合が行われている。
2022年は特に、ロシアのウクライナ侵攻に端を発して世界経済がインフレ傾向を強める中で、各国の金融当局の政策に注目が集まっていた。先陣を走り続けた米FRBは、立て続けに果断な利上げを実施して、インフレの抑え込みに目鼻を付けていた。その他の金融当局も利上げという大勢の中で独自の政策を打ち出している。
蚊帳の外だったのが日本銀行だ。金融政策決定会合は予定通りに開催されていたが、ニュースで流れるのは会合前に政策委員が集合する様子と、「大規模金融緩和の継続が決定した」と黒田日銀総裁が代わり映えのしないコメントを発表する場面だけだった。時には、迫力のない質疑応答が多少行われる程度で、攻め手を欠くマスコミの頼りなさが浮き彫りになっていた。
そんな流れの中で行われた20日の発表は、正に寝込みを襲われたかのような超弩級のサプライズを巻き起こした。東証プライムに上場されている120社ほどの金融・保険業の75%が値を上げ、とりわけ銀行業は全てが株価上昇の恩恵を受けた。対照的に不動産、陸運、情報・通信、サービス業は殆んどが値下げの悲哀を味わった。
条件反射のようなマーケットの動きに一喜一憂する必要はないだろうが、中央銀行としての日本銀行へ向けられる関心は、今回の金融政策決定会合を機に俄かに拡大する。特に来春には日銀総裁の後任人事が行われ、それを契機として黒田現総裁が金看板としていた「大規模金融緩和」が転換されるとの見方が出ている。逆に言えば日銀総裁が交代するまでは、政策は変わらないという思惑が、一気に塗り替えられた。
殊に、日本では円安の進行が輸入品の価格上昇をと言う形で、庶民の暮らしを直撃している。円安が輸出で有利になる恩恵はまず輸出業者が享受する。国家経済としては、輸出と輸入でプラマイゼロになる筈だが、時差が存在することや輸出の利益が第一義的には業者に帰属するのに対して、輸入のコストアップを国民が被ることは避けられない、というだけでは工夫が無さすぎる。
日本銀行が経済全般に刺激を与える存在であることを再認識したマーケットが、今後の日銀の動向に注目するだけでも、今回のサプライズに意味はあった。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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