太陽に引きつけられた暗黒物質を、宇宙量子センサーで検出する方法 東大ら

2022年12月8日 08:05

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ダークマターの解明に使用される宇宙原子時計のイメージ図 (c) Kavli IPMU

ダークマターの解明に使用される宇宙原子時計のイメージ図 (c) Kavli IPMU[写真拡大]

 この宇宙はその質量の95%が「見えない何か」でできている。この「見えない何か」は、暗黒物質および暗黒エネルギーとして知られているが、現時点でそれらの実態は明らかになっていない。

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 銀河系は直径10万光年だが、それは光り輝いているごく一部の薄い円盤状の部分で、実際には直径100万光年にも及ぶ黒い球体だ。この黒い球体の大部分を占めるのが暗黒物質だ。お隣のアンドロメダ座の大星雲M31は250万光年離れているが、実態は暗黒の球体が直接銀河系と接している。

 宇宙はビッグバン以降、加速度的に膨張を続けているが、これは銀河同士が持つ質量による重力によって、やがて膨張が止まると考えてきた科学者たちの予測に反する。そこで科学者たちは宇宙には重力に打ち勝って、空間膨張を促進させている謎のエネルギーがあると考えるようになった。これが暗黒エネルギーだ。

 前置きが長くなったが、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)の科学者らを中心とする国際研究チームは6日、宇宙量子センサーにより、太陽に束縛された超軽量暗黒物質を直接検出する方法に関して、研究成果を発表した。

 この研究は、原子時計の周囲にある超軽量暗黒物質による原子の遷移エネルギーの変動が、原子時計の周波数を変化させることを応用したものだ。研究チームは、水星公転軌道の内側の太陽に近い領域では、太陽の重力に引き付けられた暗黒物質が高い密度で存在すると考えた。実際その密度は不明ながら、さほど高くない密度であっても暗黒物質の検出は可能だと主張する。

 問題は太陽付近の灼熱地獄で、原子時計の周波数変動を正確に測定するための宇宙量子センサーが、機能できるかどうかだ。2018年に打ち上げられたNASAの探査機パーカー・ソーラー・プローブが有している耐熱シールド程度の性能があれば、カバーできると研究者は主張する。

 現段階では、検出技術のアイデアを示しただけだが、近い将来観測が実現する可能性は十分にある。なお今回の研究成果は、Nature Astronomyで12月5日に論文公開されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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