超新星爆発で加熱される星間ガスを観測で実証 ティコの超新星で 京大

2022年11月30日 16:18

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チャンドラ衛星で撮影されたティコの超新星残骸のX線画像。下の5枚の画像は赤い四角の領域を拡大したもの。緑の楕円で囲まれた構造が年々明るくなっていることがわかる。(画像: 京都大学の発表資料より)

チャンドラ衛星で撮影されたティコの超新星残骸のX線画像。下の5枚の画像は赤い四角の領域を拡大したもの。緑の楕円で囲まれた構造が年々明るくなっていることがわかる。(画像: 京都大学の発表資料より)[写真拡大]

 ティコの超新星SN1572は、16世紀のデンマークの天文学者ティコ・ブラーエによって初めて観測され、2022年11月11日でそれからちょうど450年を迎えた。この超新星爆発はウィキペディアによれば、「実視最大光度は-4等級で、金星に匹敵する明るさであった。その後1574年3月に、この星の輝きは、肉眼では見えなくなった」とされ、約4カ月間に渡って、16世紀後半の世間を騒がせる非常に目立った存在であったのだ。

【こちらも】超新星爆発の仕組みは星の質量が決定する 京大の研究

 京都大学は29日、このSN1572において、数年で急速に増光・加熱する特異な構造を発見したと発表した。

 超新星爆発が起こると、その星からあらゆる方向に向けて衝撃波が発せられる。この衝撃波が星の周りにある星間ガスを加熱していく現象が起こるはずだが、銀河系内でこのプロセスをリアルタイムで観測した事例はこれまでになかった。

 京都大学を中心とする研究チームは、チャンドラ衛星が2000年、03年、07年、09年、15年に観測したSN1572の残骸のX線データを解析し、今回の発見につなげている。

 幸いにしてSN1572は地球からの距離が8000光年と、比較的近くにある。そのため衝撃波が星間ガスを加熱していく鮮明なプロセスが、15年間に渡る観測写真を連続させることで、動画にすると手に取るようにわかるという。

 既に爆発から450年も経過しているにもかかわらず、まだ星間ガスが加熱される構造が残っていたことは驚きに値する(ただし、今捉えているSN1572は8000年前の姿ではある)。

 今回捉えられたSN1572の衝撃波による星間ガスの加熱現象により、星間ガス中の電子温度が、最近の15年間で1000万度近くにまで上昇していたことが判明。また加熱現象がガス粒子同士の直接衝突によるものだけでなく、電場や磁場のような遠隔作用を介した「無衝突」と呼ばれるプロセスでも、エネルギーのやりとりが行われている可能性があることも示唆された。

 この発見は超新星爆発のみならず、天体の高エネルギー活動が宇宙空間に及ぼす影響についての知見をもたらす結果となった。なお本研究の成果は、2022年11月25日に国際学術誌「The Astrophysical Journal」にオンライン掲載されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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