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世界最大の石油会社・サウジアラムコのエネルギー移行は成功するか?
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●サウジアラムコがエネルギー転換のファンド設立
サウジアラビアの国営石油企業のサウジアラムコが10月26日、世界的なエネルギー移行を目的としたファンドの設立を発表したと、ロイター通信などが報じている。
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サウジアラムコはこのファンドに15億ドル(2,100億円)規模の投資をすると見られている。
石油会社であるサウジアラムコがエネルギー移行に投資するのは、敵に塩を送るようだが、サウジアラビアの事実上の最高権力者と言われるムハンマド皇太子による、脱石油などを掲げた“ビジョン2030”の一環と見られる。
●世界一の時価総額
サウジアラムコは、保有原油埋蔵量、生産量、輸出量ともに世界最大で、5月には一時米アップルを超えて時価総額世界一になるなど、名実ともに世界一の石油会社である。
2019年12月にはサウジ証券取引所に上場し、中国・アリババグループを超える史上最大のIPOと言われた。
上場の目的も脱石油を目指す“ビジョン2030”の一環と見られており、将来的にはニューヨークやロンドン、香港など海外での追加上場も視野に入れていると言われている。
サウジ証券取引所上場前には東証での上場も有力という米紙の報道もあった。
●成功するか?
ムハンマド皇太子が”ビジョン2030”を掲げた時はコロナ前であり、時代は石油などの化石燃料から自然エネルギーへの“脱炭素社会”の移行を疑わなかった。
今回設立したアラムコ・サステナビリティー・ファンドは、温室効果ガスの削減や、水素・アンモニアなどの新エネルギー分野などに投資するとしている。
一方でサウジアラムコのナセルCEOは、現在のエネルギー移行計画に欠陥があることを指摘し、従来型エネルギー開発を並行して進めることにも言及している。
サウジアラビアのアルジャダーン財務相も国際投資会議で、実際の移行には30年かかると見通しを述べている。
サウジアラムコは石油・ガス事業が収益の柱であり、収益の大部分を占めている。脱炭素への移行は一朝一夕では不可能である。
世界の流れはコロナ後の世界的なインフレ、ロシアのウクライナ侵攻により、化石燃料の重要性も無視できなくなっている。自然エネルギーを代替エネルギーとした脱炭素社会に懐疑的になっている。
サウジアラムコも計画の見直しを迫られることが、視野に入れざるを得なくなるかもしれない。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)
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