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ダイエットで起こるリバウンドの仕組みを解明 岐阜大ら
食事制限による興奮性シナプスの抑制と摂食量の変化の機構(画像: 岐阜大学の発表資料より)[写真拡大]
肥満は糖尿病などの成人病をはじめとする様々な疾患の原因となる。そのため治療目的でダイエットが必要になることもあるだろう。食事制限によるダイエットにはしばしばリバウンドが起こることは知られているが、どうしてリバウンドが起こるのか、その仕組みは明らかでなかった。岐阜大学らの研究グループは、絶食により起こる脳の不可逆的な変化が、リバウンドの原因となることを突き止めたと発表した。
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この研究を行ったのは、岐阜大学客員教授で関西電力医学研究所統合生理学研究センター長の矢田俊彦氏らのグループである。研究成果は19日付けの「Frontiers in Nutrition」誌のオンライン版で発表された。
今回研究グループは、マウスに24時間の食事制限をした後、自由に食事を摂らせるという実験を実施。食事制限の内容は全く食事を摂らない100%食事制限(絶食)と、50%の食事制限との2通りで観察した。また食事制限したマウスの脳の神経細胞活動を測定している。
食事制限をしたマウスの制限解除後の行動は、制限の強度により異なっていた。100%制限の場合は3日間、50%制限の場合は2日間、食事の量が増加。その後50%制限したマウスは徐々に体重が減少していった。一方100%制限したマウスは、食事量の増加と体重の増加。つまりリバウンドを起こしたのだ。
そこで、マウスの脳の神経細胞でどのような変化が起こっているのかを測定。すると、100%食事制限したマウスの脳では、食欲を抑える働きを持つオキシトシン神経への伝達の抑制がみられた。食事制限により食欲が増進する仕組みの1つが明らかになったのだ。
さらに食欲を促進する神経物質の1つ「ニューロペプチドY」の受容体を阻害したところ、食事制限によるオキシトシン神経への伝達の抑制が相殺され、食事量は減少した。つまり、食事制限によりニューロペプチドYが増加し、その受容体に結合した結果、オキシトシン神経が抑制されて食欲が上昇するというメカニズムが明らかになった。
また50%食事制限の場合は、このオキシトシン神経の抑制が一時的なものだったが、100%食事制限の場合は不可逆的な変化が起こってしまい、食欲の上昇が継続してしまうことがリバウンドの原因となると考えられた。
リバウンドを起こさないダイエットを行うためには、不可逆的変化が起こらない適正な強度の食事制限を行う必要があることが、そのメカニズムとともに明らかになったのだ。(記事:室園美映子・記事一覧を見る)
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