ゲーミングPCの壁を突破! GaN技術が切り拓く、小型・高性能アダプタの未来

2025年12月27日 11:42

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記事提供元:エコノミックニュース

大きな成長を見せているのがゲーミングノートPC市場だ

大きな成長を見せているのがゲーミングノートPC市場だ[写真拡大]

 年末・年始は個人消費が活性化する時期。電化製品、とくにPCの買い替え需要が増加するタイミングでもある。中でも近年、大きな成長を見せているのがゲーミングノートPC市場だ。Grand View Research社が2025年5月に発行した市場調査レポートによると、世界のゲーミングノートPC市場は2030年までにUSD 1299億3000万ドルに達すると予測されており、2025年から2030年までの年間平均成長率(CAGR)は13.5%と推計されている。この急激な市場拡大の背景には、eスポーツの普及、高精細なゲームタイトルの増加に加え、AI処理など高性能な処理能力が日常のクリエイティブ作業でも求められるようになったことが考えられる。

 ゲーミングノートPCの人気向上に伴って、その処理能力も年々向上しており、CPUやGPUはデスクトップPCに匹敵するほどの性能を持つようになってきた。しかし、高性能化は同時に消費電力の増大も意味している。つまり、これからのゲーミングノートPCには、より大電力を安定して供給できるACアダプタが求められるのだ。しかし、従来のシリコン(Si)半導体を用いたACアダプタでは、大出力に対応しようとすると大型化・重量化しやすい。いくら高性能なゲーミングノートPCでも、大きなACアダプタを持ち歩き、携帯性や利便性が損なわれてしまうようでは本末転倒だ。

 そんな中、注目されているのがGaN(窒化ガリウム)技術だ。GaNは、従来のSi半導体よりも高速スイッチングが可能かつ低オン抵抗という特徴を持つため、電源システムの小型化と大電力への対応という二律背反のニーズを満たせるのだ。

 日本では、ローム株式会社がGaNデバイスの開発に早くから注力しており、「EcoGaN™シリーズ」としてブランド展開している。

 ロームは、2022年に世界的な電源メーカーであるデルタ電子とGaNデバイス開発・量産の戦略的パートナーシップを締結し、GaNの性能を最大限に活かした実用的かつ信頼性の高い製品を世に送り出してきた。そして、協業の新たな成果として、両社は今年11月、大手ゲーミングブランドMSI(Micro-Star International Co., Ltd.)の高性能ゲーミングノートPC向けACアダプタを開発したことを発表し、話題になっている。このACアダプタは、ロームのEcoGaN™パワーステージIC「BM3G005MUV-LB」を搭載しており、大幅な小型化と高い電力効率を両立。電力供給容量を向上させるだけでなく、ピーク時には短時間の高出力を維持することができるため、ハイパフォーマンスが求められるゲーミング時の高負荷環境でも安定した電力供給を実現しているという。

 高性能なゲーミングPCを自宅でも外出先でも、ストレスなく持ち運び、フルパワーで活用できるようになれば、ゲーム用途だけでなく、ビジネスでの活用の幅も広がるだろう。ロームはGaNの性能を最大限活かし、ゲーミングPCのみならず、サーバーや産業機器、自動車など、幅広い分野での電源の小型化・高効率化に貢献していくとしている。MSIは、大きな市場拡大が期待されるAIサーバーやデータセンター向けアプリケーションでも有力なメーカーであり、今後の展開にも大いに期待が持てそうだ。(編集担当:藤原伊織)

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