元素の起源を探るNASAのTIGERISSミッション

2022年9月1日 07:54

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南極で装置を回収する研究者たち。(画像: NASAの発表資料より)

南極で装置を回収する研究者たち。(画像: NASAの発表資料より)[写真拡大]

 地球上にはたくさんの元素が存在する。だが、それらの元素のうちのほとんどの起源は太陽系の星々ではなく、太陽系が誕生する以前に宇宙のどこかで輝いていた恒星によってもたらされたものだ。

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 水素やヘリウムは宇宙が誕生した時、つまりビッグバンの際に生成されたもので、炭素や酸素、窒素など鉄よりも軽い元素はみな恒星内部の核融合によってもたらされている。また鉄(原子番号26)よりも重い元素は、主に超新星爆発でもたらされたと考えられているが、具体的にどんなプロセスによって生成されたのかは明らかになっていない。

 NASAは、この謎の解明に取り組む「TIGERISS」ミッションを進めている。TIGERISSとは、Trans-Iron Galactic Element Recorderとよばれる粒子検出器を国際宇宙ステーション(ISS)に持ち込んで、宇宙空間で様々な方向からやってくる元素の粒子を捉え、研究をしていく取り組みだ。

 宇宙のどこかの恒星で超新星爆発が起きれば、さまざまな元素の粒子がほぼ光速にまで加速され、宇宙空間に放出されていく。また重元素は超新星爆発だけでなく、複数の中性子星からなる連星系で、中性子星どうしが合体する際にも生成されると考えられている。

 これまでに、Trans-Iron Galactic Element Recorderを気球に搭載して、原子番号56のバリウムまでは捉えることができているが、それよりも重い元素は捕捉が困難であった。だがこれをISSに持ち込むことによって、原子番号 82 の鉛と同じくらい重い元素を測定できるようになると期待されている。

 TIGERISSでは、4種の探査機で銀河中のガスの流出入を研究する。また20の恒星とその39の太陽系外惑星の可視光・赤外光や、中性子星の合体イベントからの高エネルギーガンマ線を分析。さらにブラックホール生成などの貴重な手がかりを含む粒子である、超高エネルギーニュートリノからの信号検出などを通じて、元素の起源の謎解明に挑む。

 現在もごく微量ながら宇宙の様々な方向から多様な元素がこの地球に飛来してきている。太陽系誕生時の微惑星を構成していた元素に加え、遥か彼方の宇宙空間から飛来した様々な元素が46億年間降り注いだ結果、地球は元素に富んだ惑星となったのだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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