超新星爆発研究による星誕生メカニズムへのアプローチ SETI協会

2022年6月15日 11:32

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カシオペアAの154μ波長遠赤外線偏光マップ。カシオペアAの磁場は非常に強く100ミリガウス程度と推定される。図で茶色の部分が遠赤外線放射が最も強い部分(画像: SETI協会の発表資料より)

カシオペアAの154μ波長遠赤外線偏光マップ。カシオペアAの磁場は非常に強く100ミリガウス程度と推定される。図で茶色の部分が遠赤外線放射が最も強い部分(画像: SETI協会の発表資料より)[写真拡大]

 超新星爆発によって、様々な物質が宇宙にばらまかれ、やがてそれらが新しい星の誕生の材料となって、次の世代の星が誕生するというシナリオはよく知られている。だが厳密には、そのシナリオが正しいことを証明できる確実な証拠は確認できていない。その意味では、星の輪廻転生の物語は、まだ理論上の仮説に過ぎない。これは人類が星の一生を見届け、再生までの物語を観察できるほどの長い歴史をまだ持たないためである。

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 一方で宇宙には様々な時代の星が存在し、誕生期、壮年期、終末期にある星の状況を観測できる。それらの点情報を、年代順に並べていけば、星の一生の物語全体を線としてつなげることは可能だ。今日とりあげるのは、星の終末期から次の世代の誕生期に差し掛かっている超新星残骸についての話題である。

 米SETI協会は13日、カシオペアAと呼ばれる超新星残骸の偏光観測によって、この天体からの遠赤外線放射を捉えることに成功したと発表した。超新星残骸からの遠赤外線放射を捉えることは、ほし草の山から針を見つけるのと同じくらい至難の業だという。

 今回の研究では、カシオペアAの方向から発せられた遠赤外線波長(154μ)の偏光マップが作成され、同天体における磁場の状況やダスト粒子の有無やそれらの種類、粒子の大きさ、形状、磁場と粒子の分布状態の関係などが調査された。

 カシオペアAは、超新星爆発から300年ほどしか経過しておらず、超新星爆発直後の状態を直接観測できる天体だ。今回の観測で、カシオペアAには大量のダスト粒子が存在し、その形状が球形ではなく長大であること、ケイ酸塩粒子がその主成分であることなどが判明した。

 ダスト粒子のその他の成分は、他の波長での偏光観測で今後明らかにされていくだろう。またこれらの情報に基づき、数値解析シミュレーションを進めることで、超新星爆発初期に起きていた現象がダイナミックに解明され、やがては恒星や地球のような岩石惑星、木星のようなガス惑星などの誕生のシナリオがより鮮明にされていくことだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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