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国内自動車の21年度販売、旺盛な需要に対応できず! 半導体不足が生産の仕組み変えるか?
主要国内自動車各社が公表した2021年4月から2022年3月までの国内&世界新車生産・販売台数 ともに軽自動車を含んだ数字だ[写真拡大]
日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合会(全軽自協)が発表した2021年度の国内新車販売台数は、前年同期比9.5%減の421万5826台だった。
新車販売のマイナスは3年連続で1976年度以来、45年ぶりの低水準だ。半導体など部品不足による減産が響き、比較的旺盛な購買需要に新車供給が対応できなかった。
軽自動車を除いた登録車は8.2%減の266万855台で、統計を始めた68年度以来、過去2番目の低水準。軽自動車も11.5%減の155万4971台と低水準で、97年度以来、24年ぶりの低い数字となった。同時に発表した3月の国内新車販売台数は、前年同期比16.3%減の51万2862台だった。
そして先般、日本の主要自動車各社は決算発表に匹敵する経営状況を示す、2022年3月および2021年度(2021年4月~2022年3月期)の販売、生産、輸出実績の数値を発表した──添付別表参照。
なかで世界自動車生産・販売でトップを走るトヨタ自動車は、ダイハツ工業および日野自動車を含めたグループの実績について、「2021年度はトヨタのグローバル販売は約951万台(前期比104.7%)と過去2番目の水準となった。グローバル生産は新型コロナウイルス感染拡大や部品供給不足の影響があったものの、関係仕入先などの尽力の結果、約857万台(同104.7%)となった」と発表した。
また、2022年3月のトヨタグローバル生産は、半導体不足、国内仕入先におけるシステム障害、地震等による稼働停止の影響を受け、国内生産は前年を割り込んだものの、海外生産が好調で、約87万台(前年比102.8%)と単月として過去最高となった。
5月11日、トヨタがオンラインで発表した2022年3月期(2021年度)決算で、営業利益が前期比36%増の2兆9956億円に達し、2016年3月期の2兆8539億円を上回り最高収益とした。売上高は15%増の31兆3795億円。純利益も27%増の2兆8501億円と、4年ぶりに最高。純利益は日本企業の製造業では自らの最高記録を更新した。
このように国内海外を問わず新車需要は底堅い。しかし、自動車需要の高まりを受けて、なお市場の半導体部品在庫は不足が続く。部品メーカーが半導体を調達するには1年以上先の契約を半導体メーカーと結ばなければ販売してもらえない状況だという。
枯渇が深刻な半導体は、材料費の高騰もあり、コストを価格に転嫁する傾向にある。半導体不足が長引くにしたがって、半導体メーカーの立場はここ1~2年で強まっている模様。
マツダは4月に中国・上海ロックダウンの影響などで、中国工場は10日間操業を停止した。メキシコ工場も4月に9日間休止し、5月にもメキシコ工場で約6日間、タイ工場で約4日間の操業を停止することを明らかにした。電装関連や内外装部品などの一部の調達に支障が出る見込みとなったためだ。具体的な減産台数については表明していない。タイ工場と米国工場は通常操業していた。このように大手自動車が半導体不足などによる工場停止を発表するなど、依然として不透明な状況が続く。
トヨタも中国・上海の都市封鎖による部品調達難の影響で16日から最大6日間、新たに国内8工場の稼働を停止すると発表。5月は半導体不足の影響によって9工場10ラインで稼働を停止し、生産台数は年初計画から10万台減の75万台程度になるとしていたが、稼働停止が広がったことでさらに約4万台の減産となる見込み。
ホンダも鈴鹿製作所の4月の稼働率を2月時点の計画比で5割減となったようだ。半導体不足や中国・上海市のロックダウンなどで部品供給や物流に遅延が生じ、当初発表の計画から3割減の減産規模となった。また、埼玉製作所の4月稼働率は計画比で3割減となりそう。これも当初計画1割減から減産規模を拡大した。
そのなかで自動車部品メーカー、トヨタグループならデンソーやアイシンなどに半導体を供給する部品メーカーと交渉が急増した。自動車メーカー側からは「これだけの台数を生産したい、なんとか半導体を調達してほしい」と強く要求される。しかし、半導体メーカーの生産能力には限界があるため現実的な妥協点を探っているのが現状だ。
これまで、トヨタなど自動車メーカーは在庫を最低限しか持たない自慢の「カンバン方式」で高効率生産を行なってきた。しかし、半導体の製造には半年ほどのリードタイムがかかり、急な需要変動に対応しにくい。
また、昨今好調な高級ブランド車に使う半導体や部材は高い品質と性能が求められる。メーカー側も一部の車種で減産が避けられないと判断、カンバン方式を見直し、部材の長期契約にも応じる状況も生まれてきたという。完成車メーカーは裾野の広いサプライチェーンを維持することで、これまでの無理な生産体制の要求に対し、見直しが進むだろう、というのが大方の見方だ。(編集担当:吉田恒)
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