少子化時代&結婚観の変化が突き付ける、厳しい課題

2022年1月21日 08:19

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 私の父は3月に102歳になる。現在、要介護度1で、介護施設(サ高住)の住人。父はしばしば、「俺は3食付きのこういう施設で、月1回の訪問診療を受け気ままに余生を送っているが、ビタ一文お前ら(私と弟)の世話になっていないからな・・・」と口にする。

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 その通りだから、言葉の返しようがないし「有難い」と思っている。父の通帳を預かっているので月々の費用は容易に分かる。医療費を含め20万円+α。父親時代の共済年金+軍人恩給がその原資だ。

 私は週刊紙「高齢者住宅新聞」で月に2回、「ヘルスケア関連企業株価研究」を連載している。取り上げる企業の7-8割が「介護施設」を展開する企業だ。取材に際し、必ず質問する項目がある。「入居者の月額費用は、医療費・後期高齢者医療保険などを含め平均金額はどのくらいか」。

 結果は必ずしも原稿に反映させない。企業に30年間勤務したサラリーマンが退職後、65歳から手にする厚生年金はおおよそ月額ベースで20万円。「厚生年金の範囲内で・・・とういう施設」の場合にのみ、「適当な費用で入居が可能」と記す。

 何故、こんな原稿を書く気になったのか。昨年12月30日の「日経Myニュース」欄で、『シングル世帯が増加 専門家が説く「必要な覚悟」』を読んだことだった。そこにはこんな統計が紹介されていた。

★政府が昨年11月末に公表した20年の国勢調査の結果では、単身(シングル)世帯の割合が38.1%となり、05年比で8.6ポイント上昇した。

 対してニッセイ基礎研究所の人口動態シニアリサーチャーの天野馨南子氏は、若いうちからシングルで生きる「おひとり様」人生を選ぶ人が増えていることを前提に、「結婚はいうまでもなく個人の自由だが、シングルを選択する場合には、少子化によって起きる事態への覚悟が必要」という考え方を示している。

 詳細は記事を読んでいただくとして、周知の通り老齢年金は「現役若者世代が担う」という枠組み。天野氏は「日本は先進国でも最速の少子化によって将来の納税者が激減している」とした上で、こうも語っている。

 「20代から40代の未婚者の6~7割が親族と同居しているが、50歳前後になると両親がなくなったり施設の入居が必要になったりする・・・孤独感を感じるようになる。明治安田総合研究所の17年の調査では、1度独身を決意した男女が『45歳以上でやはり結婚をしたいと思うようになった理由』として、『老後1人で生活することへの不安』をあげる男性が約4割、女性で約5割にも達した」。

 私が週に1回訪ねる不動産関連の週刊紙のスタッフは、総勢8名。社長は既婚者。三十路入り早々の女性記者、三十路半ばから五十路近くの男女計7名は全員シングル世帯。

 いま、「結婚はしないの!?」などと問いかければ「セクハラ/パワハラ」と攻撃を受けかねない。だが少子化時代の「おひとり様」が背負い込む負担を考えると・・・

 当家は、70代入り口の老爺・婆世帯。「人生の墓場」からは既に逃避できない。が、自分が死んだ後に専業主婦だった相方に遺族年金がどのくらい入るのか(相方の第3号年金と合わせ)は調べた。その上でどっちが残るにしても「入居可能施設」をチェックしているのが現状である。

 少子化時代&結婚観の変化は、難しい問題を突き付けている。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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