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ソフトバンクG、40億ドルの借入を調整中か 市場の反応は・・
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ソフトバンクグループ(SBG)が40億ドル(約4600億円)を、米投資会社アポロ・グローバル・マネジメントから借入する方向で調整中というニュースが、報じられている。
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借入目的は手元資金の確保を主眼とし、運用環境の悪化に備えながら積極投資を続けるためだと言う。
担保は、SBGが独自に運用しているソフトバンク・ビジョン・ファンド2(SVF2)の、保有株式400億ドル分が対象になる。
SBGの孫正義会長兼社長は8月10日に開催された決算説明会で、「投資規模の大きいSVF1に対して、SVF2は小さめの会社に分散投資している」と説明している。SVF2の投資残高は、21年3月末時点のおよそ400億ドルとされているため、当時SVF2が投資していた概ね全てを今回の担保に差し出すことになるようだ。
40億ドルの融資に対して、400億ドルの投資に相当する担保を提供するので、担保への投資額が借入金額の10倍に相当するという、極端なアンバランスが生じる。今後の追加融資について多少の含みを持たせるにしても、貸し手優位の条件と見られるのは止むを得まい。
金利も1ケタ台の半ばと言うから5%前後と推定される。投資会社であるSBGに適用される金利が、一般の市中金利(現在なら1~2%程度が大半だろう)と同等になることはないにしても、高めであることは否めない。担保条件、金利条件とも、一般的には「足元を見られている」と言われても反論し難い。
もっとも、10兆円で度肝を抜いた(SVF)1号ファンドの約6割を占めるサウジの「パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)」とアブダビの「ムバダラ・インベストメント・カンパニー」(以下、サウジファンド)という両政府系ファンドからの資金には、「元本保証」と「6~7%の確定利回り」という破格の条件が設定されていたことを勘案すると、似たようなものか。
1号ファンドは毎年サウジファンドに4000億円ほどの利払いが必要であるのに対して、投資対象先の好不調の波は非常に大きいから、特に不調時の利払い資金は大きな負担になる。投資ファンドであるSVFには配当等の現金収入が限られているため、手持ち資産を売却して資金を捻出する必要に迫られることもある。
好調な時には利益確定と看做すにしても、不調な時には損失確定になるので、4000億円もの利払いに対する負担感の大きさを懸念する声はあった。
今回調整中と伝えられる借入金額が、サウジファンドへの利払い相当額に近似していると感じるのはうがち過ぎか。
20年11月18日に、米紙ニューヨーク・タイムズのオンライン講演会に登壇した孫会長は、折から猖獗を極めていた新型コロナウイルスの影響が、投資先企業に及ぼす最悪のケースに備えて現金約800億ドル(約8兆3000億円)を手元に確保したと豪語していた。
僅か1年前に約800億ドルの現金を手元に確保していたSBGが、現在は20分の1の40億ドルの借入話を貸し手優位の条件で進めていることに、違和感を抱く人は少なくないだろう。
注目された22、23日の東京証券取引所でも、SBGの終値は10~20円程度の僅かな動きに終始した。SBGにまつわる落差の大きいニュースに、対処を迷う投資家の戸惑いを感じさせる値動きだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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