リュウグウからのリターンサンプル、初期分析から判明した事実は? JAXA

2021年12月22日 10:44

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リュウグウからのリターンサンプルの密度分布を示すヒストグラム この測定結果から粒子の空隙度は46%程度と推定され、探査機の赤外撮像カメラ の観測から推定された空隙率(30~50%)の範囲内に収まっており、観測結果とも矛盾しないことが分かった。 (c) JAXA

リュウグウからのリターンサンプルの密度分布を示すヒストグラム この測定結果から粒子の空隙度は46%程度と推定され、探査機の赤外撮像カメラ の観測から推定された空隙率(30~50%)の範囲内に収まっており、観測結果とも矛盾しないことが分かった。 (c) JAXA[写真拡大]

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は21日、リュウグウから「はやぶさ2」が持ち帰ったサンプルの分析結果に関する情報を公開した。サンプル合計約5.4gが地球に送り届けられたのは、今からちょうど1年前の2020年12月のことで、初期分析が始まったのは2021年6月からである。

【こちらも】小惑星「リュウグウ」が水を消失した原因、明らかに 米大学の研究

 リュウグウはC型小惑星に分類され、炭素に富んだ存在であることがわかっていた。リターンサンプルを分析した結果、現地で撮像したリュウグウの全体の特徴をよく反映したものであり、水や有機物を含んだ太陽系誕生直後の状態を保った存在であることが判明したという。

 リターンサンプルは、地球に落下した隕石との比較では組成がよく似ているものの、比重は隕石より小さく、光の反射能が低い。これはリュウグウがより炭素の含有量が多く、水素やヘリウム、その他の揮発成分がほとんど含まれていないために、黒っぽく見えると考えればよいだろう。

 従来の隕石の研究により、太陽系の初期段階の状態については多くの情報が得られてはいたが、隕石そのものの由来がそもそも不明であるため、根源的な情報にたどり着くことが困難であった。だがリターンサンプルは、小惑星リュウグウ由来のものであることが明らかなため、リュウグウの軌道の歴史を遡ることによって、どんな経緯を経て太陽系が現在のような形に進化してきたのかが推定可能となる。

 「はやぶさ2」は、人類で初めてC型小惑星からのサンプルリターンに成功したのだが、そのサンプルがリュウグウの代表的な状態を反映したものであったかどうかは、検証の余地が残っていた。だが地球で生命を誕生させた有機化合物が、誕生直後の太陽系の中でどのような状態で存在し、現在に至ったのかを知る非常に有力な証拠を持ち帰ったことが、初期の分析で改めて確認されたわけだ。

 JAXAのホームページでは、リュウグウから持ち帰ったサンプルの光学的な特性の詳細な分析結果や、粒子サイズ、密度分布に関する情報がかなり詳しく紹介されている。興味のある人は是非とも訪れてみてほしい。またさらに詳細な論文は、英文ながらNature Astronomy誌でも公開されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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