月の火山活動は20億年前に終わっていた 米ブラウン大学の研究

2021年10月20日 08:14

印刷

火山活動で形成されたと考えられている嵐の大洋 JayDicksonによるレンダリング(画像: ブラウン大学の発表資料より)

火山活動で形成されたと考えられている嵐の大洋 JayDicksonによるレンダリング(画像: ブラウン大学の発表資料より)[写真拡大]

 これまで人類が月面から持ち帰った石は、アメリカのアポロ計画と旧ソ連のルナ計画によるものだ。それらは必ずしも、月の最新火山活動の痕跡が記録されている場所で採集されたものではなかった。

【こちらも】火星の火山、現在も活動か 米国惑星科学研究所

 ところが最近、中国が嫦娥5ミッションによって45年ぶりに月からサンプルを持ち帰っている。このサンプルを分析した米ブラウン大学の科学者らは、月面で最も直近に起こったと考えられる火山活動は、今からおよそ20億年前であったと発表した。

 中国が持ち帰ったサンプルは、嵐の太陽と呼ばれる場所から採集された玄武岩で、この領域は高濃度のカリウム、トリウム、ウランが存在していることが特徴である。これらの元素は、長寿命の放射性崩壊によって熱を発生し、月の近くで長期のマグマ活動を維持している可能性があるという。

 月の石が形成された年代を特定することは、非常に困難を伴う作業だ。その石が火山活動によってできたものなのか、微惑星の衝突による運動エネルギーがもたらした熱によって形成されたものなのか、識別しなければならにない。一方で、月の表面には放射年代測定用のサンプルがないことも、困難さを増している。

 月面のクレーターが多い領域は、微惑星が衝突した期間が長く、古い年代に形成された地形であると考えられている。だが10億年前から30億年前にかけて形成された地形では、これまで収集されたデータは極めて少なかった。

 今回サンプルが採集された、嵐の太陽にある火山の塚であるリュムケル山付近の絶対放射年代(約20億年前)を取得できたことは、非常に意義があるという。しかもこれは月だけでなく他の火星、金星などの惑星表面の形成年代推定にも役立つデータになる。

 今回の研究では、月の石の形成年代は明らかにできた。だが月における火山活動が、トリウムのような放射性元素の核分裂による熱エネルギーが長期間持続したために起こっていた、直接的な証拠は見いだせておらず、研究の余地は残されているという。たとえ20億年前に月で火山が噴火していたとしても、当時地球では人類はまだ誕生していなかったため、火山活動を直接観測して記録に残すことはできなかっただろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事