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「楽天市場」絶好調で年間流通総額5兆円が視野に、30年には10兆円の皮算用
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楽天の三木谷浩史会長兼社長は、2日に開催された出店者向けの「楽天EXPO2021」というオンラインイベントで、今年度楽天のEC流通総額が5兆円を突破するという見通しを示すと共に、2030年には10兆円を目指すという夢を語った。21年の中間期(1~6月)に、楽天グループの国内EC流通総額が約2兆2777億円を計上したことから、21年度の5兆円達成は可能と判断したようだ。
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三木谷会長が、楽天市場で3980円以上の買い物をした場合の配送料を無料にすると表明したのは、19年8月1日に横浜市内で開催された事業説明会の場だった。当時アマゾンジャパンとの間で熾烈に競合していた楽天が、顧客の不満が配送料にあると分析した結果の対応だった。
アマゾンの配送料金システムがシンプルで、プライム会員ならば無料であるのに対して、楽天市場の配送料金は出店業者が独自に決めていたから、統一感が欠けていたハンディは否めない。欲しいものを見つけても、注文しなければ配送料金を加算した合計額が分からない、というシステムは確かに使い勝手が悪い。
「だから」という発想で打ち出した3980円以上配送料無料は、その後一部の出店業者との間で激しい軋轢を生み、「楽天ユニオン」という任意団体に加入する出店業者まで出現する事態となった。当時の混乱を思えば、流通総額5兆円が視野に入って来たのは信じられないような話だ。
EC流通のスケールアップは、新型コロナウイルスの感染拡大と連動している。不要不急の外出が敬遠されて、3密に気を遣(つか)うくらいならと、宅配が大きな選択肢に躍進したからだ。新型コロナが早々に沈静化することは望めないが、ワクチンの接種が進み治療薬や治療方法に日々の進歩があることを考えれば、いずれ普段の生活が返ってくることが期待される。
EC流通が好調な楽天には、優越的な地位の乱用を指摘する声が絶えない。送料無料化をうたい上げた際の騒動の際にも、相当深刻な声が飛び交った。楽天市場のポイント付与に関しても、本部負担軽減を目指した変更が目立つ、と指摘する声もある。配送委託業者が配送サービス終了を突き付けられて、納まらない胸中をぶちまけたのは今月だ。
アフターコロナの時代に、EC流通業界が現在の活況を続けていられるかどうかは全く分からない。現在の流通量を前提として進められている投資が、その後も想定通りの効果を生むのか、過剰な投資として持て余されることはないのか。良いことが重なるように、悪いことも重なることは先人が再三警句として残している。コロナ禍が去って、悪夢が始まったときには理解者が多い方が、心強い筈だ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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