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EVへの急傾斜進む自動車業界で懸念の、バッテリー発火とリサイクル問題!
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世界中の自動車メーカーが、電気自動車(EV)への動きを加速させている。目的が二酸化炭素の排出量を削減して、年々悪化が伝えられる地球温暖化を防止しようということだから、表立って背を向けることは出来ない。
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なにしろ、欧州連合(EU)では18年12月に、乗用車から排出されるCO2の企業平均目標を30年までに60g/km以下にすることを決定し、守らないメーカーには巨額のペナルティが課せられることになっている。20年10月には、中国が35年までにEV等の「新エネルギー車(NEV)」が新車販売に占めるシェアを50%以上とし、残りはハイブリッド車(HV)にして、35年までには全ての新車を環境対応車にする指針を公表している。
先立つ9月に、習近平国家主席は国連総会で「60年代までに二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにする」目標を表明していた。米カリフォルニア州でも同月、実質的には35年にガソリン車の新車販売を禁じる行政命令を出した。EVに向けた動きは大勢が固まったと言える。
EVに使われているリチウムイオンバッテリーには従来、高価で重い、航続距離が短い、充電時間が長いといったネックが指摘されて来た。このネックは相互に関連していて、航続距離を伸ばすために搭載するバッテリーを増やすと価格が上がり、車両の重量が増加するためコスパが悪くなるというジレンマとなっていた。
現在こうしたネックは徐々に克服されつつあるようだが、新たに浮上してきた問題は車が突然燃え上がるという発火問題とリサイクル問題だ。
バッテリーは複数のメーカーが製造した部材を基に製品化されるから、発火等の異常事態が発生した場合には原因究明が容易でない。究極の技術を集約した製品のどこに欠陥があるのかを、短時間で判定できるシステムも組織も存在していないからだ。
米GMは17年、20年に続いて8月に、シボレー・ボルトEVのバッテリーに発火の恐れがあるとして、3回目のリコールを発表した。3回のリコールで総額2000億円ほどのリコール費用が発生する。GMはリコールの費用をバッテリーメーカーである韓国LG化学に請求するがどんな結果になるかは不明だ。
21年2月の韓国現代自動車のEVリコールではLG化学の負担割合は約70%だった。世界で第2位のEVバッテリーメーカーであるLG化学は、高額のリコール費用を負担した以上に世界の自動車メーカーの信頼を大きく損ねてしまった。
また、EVが衝突事故で大破して出火したような場合、迅速で安全・確実に消火する技術は確立されていない。様々に伝えられる情報を読み解くと、バッテリーを水没させて状況を見守る方法が現在ではベストのようだが、プラットフォームで厳重に守られていながら、事故により出火したバッテリーを水没させるためには、車両を持ち上げるクレーン車と車両を水没させられるサイズの水槽(車が移動できる水槽を引っ張るイメージ)が必要になるから簡単な話ではない。
EVの普及後に訪れるリサイクル問題も厄介だ。EV1台当り250~500kgのバッテリーが搭載されるので廃車時期にはリサイクル問題が本格化する。製造メーカーがリサイクルすることが最も自然だが、東京で廃車になったEVのバッテリーを製造国の米国やドイツに送り届けることは不可能だ。統一したマニュアルでリサイクルを可能にするためには、バッテリーの規格を統一することが避けられないが、リチウムイオンバッテリーから全固体バッテリーへの移行が近いと期待されている時期に、容易に可能なテーマとも思えない。
日本車潰しが本音のようにも語られるEV化の急速な進展は、今後様々な課題に直面しそうだ(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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