都心不動産価格に異変? コロナ禍に追い打ちをかける「生産緑地制度の2022年問題」 前編

2021年9月1日 07:40

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 コロナ禍を機に広まったテレワーク需要については、紙文化や対面コミュニケーションの重視という日本独特の企業体質によって減衰していった。だが少子高齢化や介護問題など様々な社会問題解決や、日本が後塵を拝しているデジタル競争力の向上などを目的として、9月1日に発足したデジタル庁を中心に、今後も推進されていくことは間違いない。

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 「働き方改革」という名の下で、自由な時間が多くなっただけではなく、満員電車というストレスから解放された意義は大きく、企業としてもABW(Activity Based Working)対応を広げつある。つまり、全社員を収容できるような広さのオフィスを賃料が割高な都心に構えること自体、企業にとっては無駄な経費となってくるわけだ。

 当然のことながら、東京主要5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)にあるオフィスビルの平均空室率が14カ月連続で上昇している一方で、都心部のマンション需要は二極化が進んでいるという。都心部の高条件・高立地・高価格の需要が旺盛である一方、郊外ベッドタウンのファミリー層向けマンションには陰りが見えているようだ。

 コロナ禍をきっかけに、都心部に住む必要性が無くなり、海や山などの自然が多く、かつ都心部に通える程度の郊外の地域(神奈川、千葉)に住宅需要が増していることは確かだ。しかしより高条件・高立地である都心部への住宅需要も高まっていると考えれば、どちらも決して不思議ではない兆候ではある。一方で、中途半端な住環境に見える、郊外ベッドタウンのファミリー層向けマンションの需要は薄れる。

 つまり、コロナ禍によって旅行や飲食の出費が極度に抑えられる一方、テレワークの普及や外出を避ける傾向によって巣ごもり消費が増加しているという背景がそこにあると考えればよいだろう。家で過ごす機会が増えたのであれば、家族にとって、より良い住まいを求める向きは決して不思議なことではない。

 では、そもそも人々がなぜ都心部のマンションに住むのだろうかと考えれば、単純に、都心部では満足がいく広さの戸建が手に入らないからであろう。庭付きの注文住宅を手に入れたければ、都心から離れるだけはなく、最寄り駅からも離れ、通勤や通学に難がある。しかし立地が良ければ、限られた狭い土地に建てられた建売住宅を選択するしかない。

 そんな都内の住宅事情において、一石を投じる可能性があるのが「生産緑地制度の2022年問題」である。2022年以降、都内に広い土地が供給されていく可能性があるのだ。(続く)(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

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