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OPECプラスの協調減産(減産縮小)合意にも関わらず反落した7月中旬のアメリカ株式市場は、翌週19日より堅調に上昇しており、ナスダックに続いてダウ平均株価も史上最高値を更新した。日足チャートで確認すると、75日単純移動平均線および指数平滑移動平均線に反発しながら上昇を続けている状態だ。
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前回お伝えしたとおり、リスクオフとコロナ感染者数増を相関とするのは大きな誤りであり、コロナ感染者数増は金融緩和施策の長期化期待、コロナ感染者数減は経済正常化期待と、いずれにせよリスクオンとなる。
とはいえ、アメリカ株式市場が向かうところ敵なしかと言えばそういうわけではない。やはり、当面注目すべきは、FRBをはじめとする世界各国の中央銀行が最もセンシティブとなっているインフレリスクであろう。そもそも、中央銀行の主たる役務は「物価の安定」なのだ。
では、中央銀行が目指す「物価の安定」とは何かと言えば、「景気の拡大を背景に、ごく自然的に発生する、安定的な物価の上昇」と言えよう。物価の「不動」でも「過剰上昇」でもなく、当然「下落」でもない。日本銀行が執着し続けてきた「年2%の物価上昇率」という目標は、多くの中央銀行の共通認識として掲げられている目標だ。
つまり、中央銀行は、(1)「企業の売上増(景気拡大)」、(2)「賃金上昇(購買力上昇)+雇用増」、(3)「モノ・サービスの需要増(消費増)」、(4)「モノ・サービスの値上がり(インフレ)」という好循環を繰り返す「良いインフレ」が起きることを目指している。そのために、金融緩和と金融引き締めという両軸の金融政策を繰り返していることになる。
それでは、「悪いインフレ」とは何かと言えば、(1)~(4)のロジックには因らないインフレである。例えば、先日問題となった原油高の何が悪いのかと言えば、原油高により燃料費が高騰して(4)「インフレ」が起きても、(1)「企業の売上増」や(2)「賃金上昇+雇用増」にはつながらず、ただただ企業の生産性や市民の生活を圧迫する結果となるからだ。
もちろん、原油高がこのロジックの過程で引き起こされているのであれば問題ない。つまり、(3)「需要増」の結果として、供給量を増やすために燃料費としての原油の需要も増加し、物価が上がるのであれば問題がないということである。しかしながら、原油高の理由が、OPECプラスという合議体の政治的な駆け引きの影響ということであれば、話は別というわけだ。(続く)(記事:小林弘卓・記事一覧を見る)
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