木造ビル&木造マンションの時代が幕開け!

2021年7月28日 16:52

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三井不動産と竹中工務店が東京・日本橋で2025年竣工を目指している木造17階建てビルのイメージ。(三井不動産の発表資料より)

三井不動産と竹中工務店が東京・日本橋で2025年竣工を目指している木造17階建てビルのイメージ。(三井不動産の発表資料より)[写真拡大]

 木造で高さ350m・地上7階建ての超高層ビルを、2041年を目標に東京・丸の内地区に建設する。木造住宅のトップ企業:住友林業がそんな構想を公にしたのは、2018年2月に発表した『研究・技術開発の長期ビジョン「W350計画」』の説明会の時だった。

【こちらも】住友林業の「木造」70階建てビル構想に期待したい

 正直当時は、「荒唐無稽」と揶揄する指摘が聞かれた。「現代版バベルの塔」といった具合に、具体的に嘲笑う声も聴かれた。バベルの塔は旧約聖書:創世記に出てくる、「天に届く塔を建てようとして途中で崩壊した」とされる伝説上の建物である。

 いま手元に<一級建築士>と刷り込まれた、住友林業の女性広報スタッフの名刺がある。「木材と鉄骨材9対1のハイブリッド造り。社運を賭けた・・・とお書きになられても結構」と取材に出向いた際の言葉を思い出している。
 
 さていま、「木造ビル」話が相次いでいる。背景には断るまでもなく「環境意識の高まり」がある。脱二酸化炭素(CO2)の流れだ。木は燃やしたり腐らせたりするとCO2が発生する。が、建材として固定化すれば長期間出さないで済み、脱炭素に貢献できる。

 既に欧州など海外には80mクラスの木造ビルが登場している。また「少子化=人口減」から木造住宅の需要の減少傾向は避けられない。国産材の新たな活用先たりうる。木の活用は適宜な伐採にもつながり、自然災害の防波堤として期待できる。是非、太い流れになって欲しい。ちなみに目下、こんな動きが現実化している。

★3月に山形市に本社を構え「街(まち)に森をつくる」を掲げるシェルターが、仙台市に7階建ての純木造ビルを完成させた。

★来春完成予定で、大林組が横浜市に「地上11階建て、高さ44mの純木造ビルを建設中」。約2000平方メートルの木材を使用。1325tのCO2を固定化する。

★今秋には東京・銀座に12階建ての木造ビルが登場する予定。

★三井不動産と竹中工務店は25年の完成予定で、東京・日本橋に17階建ての木造ビルを建設。建築時に排出されるCO2は、同規模の鉄構造ビルに比べ20%少なくなる計画。

 といった具合に木造ビルの建築(計画)が着実な歩を歩み始めたのには、CLT(直交集成板)という新しい建材の登場が背景としてある。柱や梁の木製化が可能になった。内閣官房の試算では、「CLTを使った国内の建築物は20年度で約550件、5年間で10倍に増えた」という。

 木造建築の流れは、マンションの領域にも広がる気配を見せている。三井不動産グループの三井ホームは7月2日、『木造マンションの新ブランド「MOCXION(モクシオン)」を立ち上げた』と発表した。「脱炭素社会に向けた、断熱性・省エネ性・耐久性・耐火性・遮音性に優れたサステナブル木造マンション」だという。

 木が気になる時代である。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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