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脈動オーロラ発生時のオゾン層破壊を発見 「あらせ」の観測から JAXA
上:EISCAT VHFレーダーによる高さ60kmから120kmまでの電子の観測結果 / 下:高さ60kmから120kmまでのオゾンの変化(コンピューターシミュレーション結果)(画像: JAXAの発表資料より / Miyoshi et al., 2021 より改訂)[写真拡大]
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は14日、脈動オーロラが中層大気中のオゾンに及ぼす影響について、新たな研究成果を公開した。今回の研究成果は、2016年12月20日にJAXAが打ち上げた探査衛星「あらせ」の観測データを活用したもので、研究には、名古屋大学、電気通信大学、京都大学などの研究者が参加している。
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なお脈動オーロラとは、オーロラの中でも短周期で明滅するものを、中層大気とは、地球上空10kmから100kmの領域にある大気層を、それぞれ指す。
あらせは、地球近傍の宇宙空間(ジオスペース)に存在する、高エネルギーの電子が充満した放射線帯領域での現象を研究目的としている。脈動オーロラが発生するメカニズムは、過去のあらせによる観測により、ジオスペースで発生する「コーラス」波動に起因することが明らかにされている。
「コーラス」波動とは、ジオスペースにおいて、電子が磁力線に沿ってらせん状に運動することで生じる電磁波を指す。これが1秒以内の周期で変化するために、同じ周期で、オーロラの明滅が起きる。また「コーラス」波動は頻繁に生じるため、脈動オーロラの発生も日常茶飯事的に起きている。
今回の研究では、あらせに加えて、ノルウェーに設置されている欧州非干渉散乱レーダー(EISCAT)による観測データなどを用いている。地球上空60kmから120kmにおける、電子密度や電子の挙動に関するコンピューターシミュレーションを行ない、脈動オーロラの影響を定量的に評価。その結果、脈動オーロラの発生に伴い、地球上の中層大気中におけるオゾン層の破壊が起こっていることが、明らかにされた。
脈動オーロラが発生している領域(地球上空の60kmから80kmの領域)では、発生していない領域と比較して、オゾンが10%程度減少していることも明らかにされている。
オゾン層破壊は、宇宙から地球に降り注ぐ有害な紫外線への、大気圏内における吸収能力低下につながる。その結果、例えば皮膚がんの発生リスクが急上昇するなど、深刻な被害に及ぶ可能性が懸念されている。
これまで、フロンガスの大気中への放出によりオゾン層が破壊されることから、冷蔵庫などの冷媒ガスへのフロンガス使用が制限されるといった対策が取られてきた。だが脈動オーロラの作用がどのくらい深刻なものなのかまでは明らかにされておらず、今後の研究課題とされている。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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