体内時計の起源はカルシウムイオンか 全生物で共通起源の可能性も 東大らの研究

2021年5月7日 08:46

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カルシウムイオン(Ca2+ )制御タンパク質であるNa+/Ca2+交換輸送体 (NCX)を、あらゆる生物の体内時計に共通して働く因子と位置付けた研究の概念図(東京大学の発表資料より)

カルシウムイオン(Ca2+ )制御タンパク質であるNa+/Ca2+交換輸送体 (NCX)を、あらゆる生物の体内時計に共通して働く因子と位置付けた研究の概念図(東京大学の発表資料より)[写真拡大]

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 東京大学と名古屋大学、福岡大学の研究グループは6日、哺乳類から昆虫、細菌などあらゆる生命の体内時計に共通して働く因子として、カルシウムイオン(Ca2+)制御タンパク質であるNa+/Ca2+交換輸送体(NCX)を発見したと発表した。体内時計を自由に制御できる技術開発に貢献する研究成果で、研究グループは、睡眠障害やうつ病を克服する医薬品の開発につなげるとしている。

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 厚生労働省によると、体内時計は、概日リズムの形成を目的に24時間周期でリズム信号を発信する機構である。生物時計との呼び名があり、哺乳類では、脳内の視床下部の視交叉上核に存在するとされる。朝と夜に同調し、1日の活動時間帯を一定に保つことから、体の恒常性機能の中でも重要な機能と位置付けられている。

 先行研究では、体内時計を形成、機能させる因子は複数存在するとされていた。今回の研究にも関わった東大の深田吉孝教授は、2014年に哺乳類の体内時計に関わる酵素として、CaMKII(Ca2+/カルモジュリン依存性キナーゼII)を見いだしている。また名古屋市立大学の研究グループは、19年に時計タンパクの合成と結合、分解を24時間周期で繰り返す時計遺伝子が、時計遺伝子の概日リズム信号を促しているとする研究成果を発表している。

 そんな中、研究グループは、概日リズム信号の発生に寄与する転写ループに焦点を当てて研究に取り組んできた。しかし、温度低下により生化学反応の速度が低下する転写ループなどの生化学反応と、環境が変化しても周期は24時間に保たれる温度補償性との間に矛盾が生じることから、何年にもわたり研究が進まない状態が続いていた。

 そこで研究グループは、細胞時計の温度補償性に影響する薬剤をスクリーニング。その結果、NCXと、CaMKIIの2つのカルシウムシグナルにタンパク質阻害剤を注入すると、概日リズム形成に不可欠な温度補償性が破綻することを見いだした。

 解析を進めたところ、NCXとCaMKIIは相補的な関係にあり、体内の温度低下時にNCXがCa2+の流入を促進し、Ca2+によって活性化したCaMKIIが、転写ループの振動速度の低下を防いでいることが判明。NCXが低下した動物を対象にした実験では、マウスとショウジョウバエで1日周期の概日リズムに障害が出ることも、明らかになった。

 Ca2+は、概日リズムで変動する陽イオンの1つで、体内時計のペースメーカー神経でも、1日周期で増減を繰り返すことがわかっている。これにより研究グループは、「細胞内のCa2+振動が、転写ループの上流で機能する祖先的な振動体ではないか」と結論づけている。(記事:小村海・記事一覧を見る

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