木星が暗黒物質を検出するセンサーになる可能性 スタンフォード大学の研究

2021年4月15日 08:32

印刷

 科学系論文サイトarXiv(アーカイブ)で、スタンフォード大学の研究者らによる非常に興味深い論文が公開された。宇宙論の世界でこれまでその存在が予測されつつも、実際にはそれがどこにあるのか明確な証拠が見出されていない暗黒物質に関して、木星をセンサーとして用いて検出する可能性について言及したものである。

【こちらも】東大ら、銀河中心から放出される過剰なガンマ線の機構解明 暗黒物質の正体に制約

 この論文によれば、暗黒物質をとらえるための条件として、表面積が大きいこと、その星のコアの温度が低いことを挙げており、木星はこれらの条件を満たしているのだという。

 科学者たちが暗黒物質の存在を予測した背景には、宇宙全体に存在する物質の質量が、人類が直接観測可能なものだけを集めても、現在の宇宙の膨張速度を説明するには少なすぎるという事実がある。つまり、暗黒物質の性質として、重力の影響は受けるが光によってその存在をとらえることができないことが大前提となっているのだ。

 光で察知できない暗黒物質の存在をとらえる方法は、まず暗黒物質を集めて蓄積させ、その粒子が別の物質に衝突し、両方が消滅するレベルにまで高める。そうすればこの衝突現象によってガンマ線が放出されるはずであり、そのようなガンマ線が発せられていないかを根気よく観察していればよいというのだ。

 このような観測を、デルタIIロケットで2008年に打ち上げられたNASAのフェルミガンマ線宇宙望遠鏡を用いて、研究者たちは過去10年以上にわたり続けているが、まだ暗黒物質の存在の証拠を突き止めることはできていない。だが、低エネルギーレベルで1つの非常に疑わしいガンマ線過剰を観測しており、これがまさしく暗黒物質の存在を示唆するものかもしれない。

 この低エネルギーガンマ線については、現在構想段階にあるAMEGOやe-ASTROGAMなどの、MeVガンマ線望遠鏡による観測によってその正体が明らかにできるだろうと、研究者たちは主張している。これらの機器が実用化されるのは、10年ほど先になるだろうが、2030年代は暗黒物質の存在が実証され、宇宙論にとっては画期的な時代を迎えることになるかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事