地球生命起源の評価と地球外生命体の存在予測 グラナダ大学の研究

2021年2月10日 07:58

印刷

 地球上での生命起源について定量的かつ統計的な評価を行い、生命体の普遍性を明らかにしたうえで、その論理を地球外生命体へと展開し、地球以外の惑星における生命の存在形態を推論していこうとする興味深い研究論文が、米国Astrobiology誌で公開された。

【こちらも】生命の起源となった炭素の由来は何か ジョンズ・ホプキンス大学の研究

 この研究を推進しているのはスペインのグラナダ大学に本拠を置く、アンダルシア地球科学研究所の科学者たちである。彼らは地球上のあらゆる場所で見出される岩石の微細構造を、生物起源によるものなのか、それとも非生物起源によるものなのかを厳格に識別。生物起源による微細構造を様々なロジックを用いてパターン化し、統計学的手法を用いてその傾向の中から、生命固有の普遍的な法則性を見出そうと試みている。

 生命由来の微細構造のパターン化に彼らが主に採用したロジックは、窒素と炭素の構成比率(N/C)や、同位体濃縮度、キラリティなどである。

 同位体濃縮度は、例えばδ13Cの場合、対象としている試料中の13C/12Cが、標準試料中の同位体比とくらべてどの程度ずれているのかを表す指標となる。キラリティは、例えば右手と左手のように形は同じに見えても、お互いに重ね合わせることができないモノどうしの構成比率となる。有機化合物分子では、キラリティを把握することで微細構造が形成された由来をさぐるヒントになる可能性がある。

 またこの研究の最も重要なポイントは、これらのロジックが、形態や化学組成の特性を予測することが難しい、他の惑星における細胞生命の存在を明らかにするために適用できることであると、研究者たちは主張している。

 この研究で最も注意が払われているのは、岩石から見出された微細構造のうち、生命に由来しないものを厳格に識別し排除していくことである。一見生命に由来するとしか思えない微細構造が、後々の研究によって生命に由来しないことが判明した事例も多数存在が明らかになっている。

 彼らの研究では、生命由来なのかそうでないのかを決定づける不変的法則を見出すことが、究極の目標になっている。そのアウトラインはおぼろげながら見出しつつあるものの、統計的なアプローチをより確実なものにしていくためには、評価するサンプル数をさらに増やし、法則性の信頼度をより高めていく必要がある。

 偶然にも火星探査ミッションが2021年はこれから複数展開され、この研究の標本にもなりうるサンプルの回収に成功するかもしれない。そうなると宇宙生命の普遍性の謎が解明される日も意外に近いのかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事