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ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された大マゼラン雲の姿 (c) NASA[写真拡大]
みなさんは大マゼラン雲を見たことがあるだろうか?残念ながら北半球からは見ることができないが、16世紀のポルトガルの探検家フェルディナンド・マゼランが世界一周の航海の際に、その存在を観察したことにちなんでこの名前が付けられている我々の銀河系のお隣さんに相当する銀河である。
【こちらも】大マゼラン雲の観測で大質量星形成の謎を解明 アルマ望遠鏡
11月23日にイギリスの学術誌ネイチャーアストロノミーで公開されたエジンバラ大学の研究論文によれば、大マゼラン雲は7億年前に銀河系に非常に接近し、現在は地球から16万3千光年の位置にあって、秒速327kmという猛烈な速度で銀河系から遠ざかっている。この大マゼラン雲が以前から移動してきた軌道の方向に、銀河系円盤の外側のハローにある恒星が移動を続けていることが見出されているという。
銀河ハローとはウィキペディアによれば、”銀河全体を包み込むように希薄な星間物質や球状星団がまばらに分布している球状の領域”とされている。ここに存在する恒星の位置の時間的な変化を、欧州宇宙機関(ESA)が2013年に打ち上げたガイア宇宙望遠鏡を用いた観測により正確に追跡することで、銀河系に及ぼす大マゼラン雲の衝突の影響が今回確かめられたのだ。
大マゼラン雲に限らず私たちが目にしている銀河は、すべてその見かけ以上にそれを取り巻く暗黒物質の存在とその質量が大きいことが最近明らかになっている。大マゼラン雲も見かけ以上に大きな質量を持ち、銀河系にもその巨大質量が大きな影響を及ぼし続けてきたのだ。しかも驚くべきことに、銀河ハロー上の恒星は現在の大マゼラン雲のある位置に向かって引き寄せられているのではなく、かつて大マゼラン雲が移動をしてきた軌道に向かって引き寄せられていたのである。
銀河どうしが衝突を繰り返す事件は、私たちの宇宙では日常茶飯事だ。だが自動車による交通事故のように一瞬ですべてが終わる現象ではなく、数億年、あるいは数十億年にわたって展開されていく、人間の時間的スケールとは比べ物にならない壮大な宇宙のドラマである。銀河系が誕生しておよそ135億年が経過しているが、現在の銀河系の姿には、私たちがまだ発見できていない様々な銀河どうしの衝突の歴史が刻み込まれているのだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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