腕の自由な動き実現する神経細胞群を発見 脳神経が人体を制御する仕組みは 京大ら

2020年10月19日 13:01

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サルの脊椎の電気刺激を与えることで、腕運動の力ベクトルを求めた本実験のイメージ(京都大学の発表より)

サルの脊椎の電気刺激を与えることで、腕運動の力ベクトルを求めた本実験のイメージ(京都大学の発表より)[写真拡大]

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 脳神経がどのように人体の動きを制御するのか。人間は複雑な骨と関節によって多様な動きを実現させている一方、脳神経が動きの自由度の高さがもたらす負荷に耐えられないなど、反証も多く、この問いに対する答えは未だ出ていない。

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 そんな中、京都大学白眉センターと国立精神・神経医療研究センター(NCNP)の研究グループが、猿をはじめとする霊長類の手や腕の自在な動きが、脊椎にある多機能な運動制御細胞群によってコントロールされていることを発見した。

 霊長類の腕運動が、脳・神経系に存在し、複数の関節をまとめて制御する運動モジュール(神経細胞群)で効率的に制御されている可能性が証明され、研究グループは「ヒトの四肢運動が運動モジュール仮説を基礎として明らかになる」と強調している。

 現在、脳科学と人体の動きのメカニズムを調べる研究では、運動モジュール仮説が最も支持されている。この仮説は、人体の多様な動きや動きの強度は、脊椎や脳にある少数のモジュールが支配しており、モジュールの組み合わせで動きの表現が変化するという考えである。先行研究ではカエルにおいて運動モジュールが発見された経緯がある。

 一方で、ヒトや霊長類では運動モジュールが見つかっておらず、研究グループは今回、猿を被験体に運動モジュールの存在を特定することにした。

 実験条件は、歩行運動を制御する脊椎内の別々の2カ所(A、B)に電気刺激を与え、腕運動の方向と大きさがどう変化するかを手首に装着したセンサーで調べるという設定。腕運動の変化率を表現する力ベクトルをもとに、脊椎に運動方向を決める運動モジュールの存在を求めた。

 すると、AとBを同時に刺激した際の力ベクトルと、AとBの力ベクトルを積算した線形和で想定される力発生パターンが近似した。同様の結果が複数の被験体の猿で確認されたことから、「霊長類に運動モジュールは存在する」とした。

 また、脊髄のAとBの力ベクトルを積算した線形和の大きさが、予想されるよりも数倍から数十倍大きくなる「超線形和現象」が表出。この現象は、カエルの運動制御に伴ってみられる現象で、研究チームは、猿の脊髄にモジュールが存在するという結論を強調した。

 随意運動は通常、信号が大脳の前頭前野から運動前野を経た後、運動野に到達した段階で運動が実行されるが、ヒトにおいても脊椎に運動モジュールが存在することが実証できれば、神経科学の分野はさらなる進展を遂げる可能性は高いだろう。

 進展が予想されるのは、医療やスポーツなど医学や神経科学の分野だ。この運動モジュールの理論を分野横断的に応用すれば、手指の運動スキル獲得効率の促進や、多様な動きを作り出す義手の開発といった技術革新を後押しするのは間違いない。(記事:小村海・記事一覧を見る

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