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平静を装う市場 テカムセの呪いとトランプ大統領のラストチャンス 前編
イギリスのEU離脱交渉期限が差し迫り混沌とする中、アメリカのドナルド・トランプ大統領が新型コロナウイルスに感染し、数日間の入院を余儀なくされることとなった。
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ニュースを受けてダウ先物は反落、日経平均株価もドル円も連動して反落したが、アメリカ市場の終値では、一定の水準を回復して週末の取引を終えた。法人税増税を掲げるバイデン氏の優勢が伝えられる中で、決定打ともなりうるビッグニュースに市場が過敏に反応しなかった理由について考えてみたい。
これまで大国の指導者が新型コロナウイルスに感染した例といえば、イギリスのジョンソン首相やブラジルのボルソナロ大統領が挙げられる。容態が悪化しICUでの治療を受けたジョンソン首相は56歳、ウイルスをただの風邪と揶揄するボルソナロ大統領は65歳、そしてトランプ大統領は74歳である。高齢者が重篤化しやすいウイルスであることからも、トランプ大統領の容態が手放しで安泰とは言い難い(10月3日時点)。
そして、この危機に想起されるのが「テカムセの呪い」である。テムカセの呪いは単なる都市伝説に過ぎないが、かつてアメリカに領土を奪われ殺害されたインディアンのテカムセ酋長が、当時の指導者であった第9代アメリカ合衆国大統領ウィリアム・ハリソンに呪いをかけたことが始まりだという。
ウィリアム・ハリソン当人が1840年に大統領就任後、わずか1カ月で肺炎により死去したことを皮切りに、その後20年おきではあるが、就任したアメリカ大統領の任期中に災難が起こり、退任を余儀なくされるというものだ。
事実として1860年に大統領就任のエイブラハム・リンカーン、続く1880年に大統領就任のジェームズ・ガーフィールド、1900年に大統領就任のウィリアム・マッキンリーは全員が暗殺、続くウォレン・ハーディングは心臓発作、フランクリン・ルーズベルトは脳溢血、そして、1960年にはジョン・F・ケネディがいる。
もっとも、これらの内容は当時の時代背景などを勘案しておらず、1980年に大統領就任のロナルド・レーガンや、2000年に大統領就任のジョージ・W・ブッシュは、暗殺未遂こそあったが無事任期を満了している。
テムカセの呪いは、アメリカ大統領という職務がいかに過酷であり、死とも隣り合わせであることを裏付ける内容と理解できる一方で、先に述べたコロナ感染の3名の大統領が全員、ある意味ポピュリスト的な要素が強い人物である点は興味深い。
ポピュリストとは、既存のエリート層に批判的な大衆迎合主義である反面、自国を第一とする保護主義であり、移民反対など少数派への抑圧傾向がある。世界の警察でいることをやめ、パリ協定を脱退、白人至上主義をあからさまに否定しないトランプ大統領はポピュリスト的傾向の最たる例であるが、彼らが皆、新型コロナウイルスの初動対応に失敗したことは明らかだろう。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る)
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