『トヨタ品質保証体制』の瓦解? デンソー欠陥燃料ポンプ、リコール479万台

2020年9月11日 06:56

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 デンソーの大株主を見ると、トヨタ自動車が24.38%、豊田自動織機が8.95%で合わせて33.33%(2020年3月31日現在)と、トヨタが経営権を実質握っていることが分かる。改めて言う必要もないが、デンソーは実質トヨタの下請けである。

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 トヨタと言えば、高品質で世界に名をはせてきた企業だ。その品質管理は徹底したもので、不良品を出さない努力は「息詰まる」ほどのシステムを敷いている。しかし、デンソーが今回リコールした燃料ポンプでは、昔からある部品で欠陥になる要素も良く知られており、本来は設計から生産、そして市場に出てからの「良品検査」など追跡業務もルーティンとなっているはずだった。

 今回、デンソーの燃料ポンプ欠陥が6年余りもかかってリコールされたこと自体、大変深刻な事態だ。すなわち、トヨタが誇る品質保証体制が、機能していなかったことがショックなのだ。リコール対象はトヨタ322万台、スバル20.2万台、ホンダ137万台で、これまでのところ479万台余りとなっている。リコール費用は2220億円と言われているが、今後増える可能性は残されている。

 燃料ポンプの不良は2種類ある。【1】低圧燃料ポンプ、インペラ変形、555件(この時点の件数はトヨタとスバルだけで、ホンダは含まれていない) 【2】ハイブリッド車(HEV)用燃料ポンプ、モーターブラシ組付け不良、125件。

 【1】低圧燃料ポンプの作動不良は、燃料ポンプの樹脂製インペラ(羽根車)が変形(膨張)し、外周に当たっているようだ。材料の特性により整形加工時の金型温度は150度以上必要であったが、これが低かったと見られている。

 材料の樹脂は、ガラス繊維とタルク(ケイ酸マグネシウム)を含むフィラーを、強化材として合計40%ほど含有させたポリフェニレンスルフィド(PPS)と見られている。この材料を金型に射出成型する時、金型温度が150度を下回り、結晶化度が低くなり、「疎」の部分で隙間の割合が大きくなりすぎ、ガソリンが進入。膨張して、周りに当たり動かなくなるものと見られる。

 この材料と加工方法は昔から使われてきており、同様の不良も記録されており、十分に対策されていたものと見られていた。しかし、今回、リコールまでに6年を要し、品質管理体制が機能していたとは言えない状態だ。

 デンソーが品質保証体制の一部を「怠慢」していたとしか考えられない状況だ。トヨタが誇る品質保証体制においても、何かが狂うことがあれば大きな問題を起こすことが分かる。これまで問題とならなかった日々は「幸運」としか言えないのであろうか?

 だが、世間の日常システムのほとんどが、デンソーの品質保証体制に比べればかなり乱暴であるとしか言えない状況だが、幸運にも犠牲がきわめて僅かな確率しかないので日常的に見過ごされているのだ。

 僅かな確率だが、「運の悪い人」が存在するのも確かな事実だ。我々はあくまでも、社会全てのシステムにおいて「品質保証」に努力するしかないのだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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