深海堆積物に記録された古代超新星 オーストラリア国立大学の研究

2020年8月27日 08:12

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超新星爆発の残骸の代表例とされるおうし座のかに星雲。このような星間物質が存在する空間を地球は過去数千年間に通過している。 (c) NASA, ESA, J. Hester and A. Loll (Arizona State University)

超新星爆発の残骸の代表例とされるおうし座のかに星雲。このような星間物質が存在する空間を地球は過去数千年間に通過している。 (c) NASA, ESA, J. Hester and A. Loll (Arizona State University)[写真拡大]

 恒星内部の核融合反応で生み出される元素の中で、鉄は最も重い元素である。恒星内部で鉄の生成まで核融合反応が進行すると、それ以上核融合ができなくなり、恒星の中心部では重力崩壊を起こす。太陽の8倍以上の質量を持つ恒星では、この時に超新星爆発を起こす。この超新星爆発によって、鉄よりも重い元素が生み出されるのだ。

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 前置きが長くなったが、この鉄の同位元素であるFe60は、一般的に地球に多く存在する鉄よりも、原子核内に中性子を4個多く含んだ放射性元素で、1500万年以内に完全に崩壊することがわかっている。ちなみにFe60の半減期は260万年である。地球は誕生から46億年が経過しており、太陽系由来のFe60は現在は完全に崩壊してしまっている。つまり、地球上で存在が確認されるFe60は、太陽系以外のどこかでおおむね数百万年以内に形成されたことになる。

 したがって、このFe60が堆積している地層が形成された年代を特定すれば、その時代に宇宙のどこかからFe60がやってきた証拠となる。しかもFe60が発生する原因は超新星爆発に他ならないため、超新星爆発の痕跡を知る非常に有効な手段となるのだ。

 オーストラリア国立大学では、過去3万3千年以内に深海に堆積したFe60の分布を詳細に調査し、その結果を米国科学アカデミー発行の機関誌であるPNASで8月24日に公表した。それによれば、太陽系が銀河系内を移動する際に、超新星爆発の残骸である星間物質が存在する場所を通過し、その際に地球の引力によって捕捉されたFe60が地球の大気中のちりとなって降り注ぎ、長い年月を経て深海に堆積されたのだという。

 太陽系は過去数千年間に、起源が不明である局所星間雲(LIC)として知られているより高密度のガスとダストの雲の中を、移動してきた。実はこのLICの起源は、600万年前に起きたと見られる超新星爆発によるもので、そこを太陽系が通過したことを示唆している。

 この研究のポイントは、超新星爆発の衝撃波とともに飛来したFe60の痕跡を追跡したのではなく、超新星爆発の残骸として宇宙空間に浮遊している星間物質に含まれるFe60の痕跡を調べたことにある。したがって調査対象となった地層は比較的最近(3万3千年以内)に堆積された地層に限定されているわけだ。

 私たちが何気なく見上げている青空は、大気中のちりが太陽光を散乱させるためにあのように見えるわけだが、まさかそのちりに超新星爆発に由来する物質が含まれている可能性があるとは驚きだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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