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水素エンジンについては元々日本のメーカーが先行していた。トヨタのFCV(燃料電池車)をはじめ、ホンダも開発を続けているようである。しかし、今回注目されている水素を燃焼させるエンジンでは、従来のレシプロエンジン構造はそのままで、燃料として水素ガスを使うことになる。FCVでは水素で電気を起こし、その電気でモーターを動かす電動車であった。
【前回は】中国を恐れ?EU自動車メーカー、水素エンジンに移行 (1) EUの雇用を守れ
そのため、BEVと同じようにエンジン、ミッションなど自動車のこれまでの部品が不要となり、自動車産業としては雇用が半減するともみられてきた。BEVの問題点としては、発電のために化石燃料を使っているようであると結局CO2削減にならず、バッテリーのリサイクルにコストがとられてしまうことがある。
バッテリー産業がアジアに集中している今、EUとしては見直す必要に迫られている。そこで登場したのが、これまでのレシプロエンジンで燃料を水素とする方法だった。
一方、水素エンジンの技術的問題としては、これまでのガソリンエンジンに比べ放熱損失が大きいことがあるようだが、エンジン熱効率54%を目指すことが現実味を帯びている。さらに、ピストンが圧縮行程中に燃焼してしまうバックファイアも技術的問題となっている。
その点で、マツダ・ロータリーエンジンは、ロータリーピストンが回転していく構造上、圧縮行程で高熱となった空気を移動させていることとなり、温度が下がってバックファイアが起きにくい。ロータリーエンジンは、ハウジング内に直接e-fuel(水素燃料)のe-gas(メタン)を噴射して、点火プラグで点火する仕組みだ。
また、ボッシュの「予混合過給リーンバーン(ポート噴射希燃焼)」に比べ、日本の産業技術総合研究所、川崎重工業などが確立した「PCC(Plume Ignition and Combustion Concept:過濃混合気点火)燃焼」を行うと、放熱損失が削減できるメリットが大きい。
これはディーゼルエンジンのメカニズムであり、「水素噴流火炎の拡散燃焼」と言えるものだ。つまり、水素ガスをシリンダー内に直接噴し、圧縮自着火させる。または、ガソリンエンジンのように水素ガスをシリンダー内に直接噴射し、点火プラグで点火する。
すると、燃焼火炎がエンジン内の気筒壁面に触れることをかなり減らすことが出来るようで、放熱損失を抑えられるようだ。しかし、これはまだ産業用大型エンジンであるため、乗用車のエンジンとして開発してほしいところだ。その点、マツダ・ロータリーエンジンは、ローターが回転して圧縮工程、燃焼工程と移動しているので、放熱損失においても構造的に有利であるようだ。
「アフターコロナ」の自動車産業界は、水素エンジンによって、これまでのBEVの流れを一変させてしまう可能性も出てきた。インフラのガソリンスタンドがそのまま使えるとなると投資コストが激減し、ガソリンスタンドも「商売替え」しなくても済むだろう。水素社会が普及するのもあり得ることになってきた。何より、日本でも雇用を維持できることが大きいと考えられる。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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