NYの視点:FRB、長い回復軌道を警戒

2020年6月11日 07:47

印刷

記事提供元:フィスコ


*07:47JST NYの視点:FRB、長い回復軌道を警戒
米連邦準備制度理事会(FRB)は連邦公開市場委員会(FOMC)で市場の予想通り政策金利据え置きを全会一致で決定した。資産購入も現行のペース、国債月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を400億ドル規模を継続していく方針。声明では大きな変更はなかったが、パウエルFRB議長は会見で、金融政策が現時点で景気を支援するために良好な位置にあると当面政策を据え置く方針を表明した。また、必要とあれば国債購入策修正の準備があるとした。

また、5月雇用統計が予想外に改善したため市場の一部ではV字型回復への期待も広がったが、議長は「予想外に楽観的だった」とコメント。労働市場は底打ちしたかもしれないがわからないとした。さらに、不完全雇用率(U6)が労働市場の広範なスラックを表している」と指摘し、「雇用統計が失業の状況を過小評価している可能性がある」と指摘。依然、失業者数が異例の規模で、2200万から2400万人の失業者が雇用復帰する必要があり、労働市場に回復が見られるまで緩和措置を継続していくと慎重な姿勢を維持した。

FRBスタッフが予測で2022年まで政策金利据え置きを予想していることが明らかになったことに加えて、パウエルFRB議長が「現時点で利上げを考えることすら考えていない」と言及したことも、市場でハト派寄りととらえられている。

議長は、経済に長期にわたる損傷が残るリスクを警告。ただ、現時点では長期見通しを修正するには時期尚早との見方を示している。また、金融基盤が強く、状況がまったく相違すると、1930年代の恐慌時のような景気に陥る可能性は否定した。米国の金利先安観にドルも当面軟調に推移する可能性が強そうだ。

●パウエルFRB議長会見のポイント
■経済
「経済の軌道はかなり不透明」
「第2四半期の成長の落ちこみは過去最大となる可能性」

■恐慌入りの可能性
「現状と恐慌時と状況はかなり違う、金融基盤が強い」

■5月雇用統計
「5月雇用統計は予想外に楽観的だった」
「5月の改善にかかわらず、失業の規模は歴史的にも高い」
「雇用統計は失業の状況を過小評価している可能性がある」
「5月雇用統計はいかに状況が不透明であるかを表明」
「5月雇用統計は良かったが、先は長い」
「不完全雇用率(U6)が労働市場の広範なスラックを表している」
「2200万から2400万人の失業者が雇用復帰する必要があり、労働市場に回復が見られるまで緩和措置継続」

■イールドカーブコントロール
今後の会合で協議を続ける

■FRB見通し
「GDP:2020年−6.5%、2021年+5%、2022年+3.5%」
「政策金利:2020年末0.1%、2021年末0.1%、2022年末0.1%」《CS》

関連記事