米国の失業率が戦後最悪に コロナの脅威

2020年5月10日 17:48

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 米労働省は8日、世界の市場関係者が注目した4月の雇用統計を発表した。失業率は新型コロナウイルスの影響が一部のみ反映された前月の4.4%から14.7%となり、戦後最悪の水準まで急激に上昇。新規雇用者数はマイナス2,050万人で、過去最大の減少幅となった。

 エコノミスト等による事前の予想は、失業率が16%、新規雇用はマイナス2,200万人だった。そのため同日のNY市場株価にネガティブな動きは見られなかったものの、今回の統計結果は衝撃的な内容だ。5月はさらに悪化する可能性があると見られており、回復に数年を要するとも考えられている点は、決して楽観視できるものではない。

 米労働省の発表によれば、4月の失業率は14.7%。コロナの影響が米国で顕在化していなかった2月の3.5%から、たった2カ月間で10%以上も悪化。1982年11月の10.8%を超え戦後最悪となった。リーマン・ブラザーズの経営破たんが契機となり世界へ影響を与えた金融危機時においても、失業率は10%を超えたが、その際はリーマンの破たんから1年をかけて失業率が悪化し2桁に達していた。

  新規雇用者数は、一般的に10~15万人程度の増加が適正水準と見られているところ、4月はマイナス2,050万人。3月のマイナス87万人(前月発表された速報値70.1万人から下方修正)から大幅に悪化し、短期間に失業者が増えた。

 幅広い産業で解雇が広がる中、娯楽・ホスピタリティー(レストランやホテルの接客業など)がマイナス765.3万人と突出している。皮肉なことに、低所得者が多い接客業等で解雇が急増したことで、米国全体の平均時給は前月比4.7%増、前年同月比7.9%増と急伸している。

 米ジョンズ・ホプキンス大学の統計によれば、日本時間10日時点における米国の新型コロナウイルス感染者数は130万人超。失業者数は感染者数と比べ桁違いに多く、パンデミックは経済危機の色合いを濃くしつつある。

 かかる状況下、米中両政府は8日、コロナ感染拡大以降で初となる、貿易協議にかかる電話会議を行った。中国・武漢発と見られるウイルスによるパンデミックで、経済に大打撃を受けている米国の中国に対する責任追及姿勢が変わらない中、今年1月に署名された両国の貿易協議の合意について、今後の動きが注目される。(記事:dailyst・記事一覧を見る

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