コロナ拡大で海外M&A厳格化の動き 中国による買収警戒か 日本企業に逆風も

2020年5月9日 16:26

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 7日、日本貿易振興機構(ジェトロ)は「地域・分析レポート」を公表した。EUやオーストラリア、インドなどで海外M&Aを規制する動きが広がっており、新型コロナウイルスの影響で企業価値が下がった企業が、外国企業に買収される可能性を警戒しているようだ。

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 主に中国企業による買収を懸念した動きのようだが、海外M&Aを手がける日本企業にとっても逆風となろう。M&Aの仲介企業、また経営戦略に海外M&Aを掲げる企業に影響がありそうだ。

■EUや米国などでは業種を限定し規制

 同レポートによると、最初に規制に乗り出したのがEUだ。3月19日に「CODIV-19の流行拡大に対する経済政策」を発表し、健康・医療関係をはじめとする戦略的産業に対する買収には、より厳格な審査を実施する。

 業種を限定した規制はスペイン、カナダ、米国でも同様に行われている。安全保障や公益秩序の観点から審査がなされ、自国民にとって不利益な買収を防ぐ狙いがある。

■オーストラリア、インドでは業種を限定せずに規制

 業種を限定せず、より厳しい規制をしているのがオーストラリアとインドだ。

 オーストラリアではこれまで投資金額による規制がなされていた。一般投資では2億7,500万豪ドル、農業分野で6,000万豪ドル以上の外資からの投資を審査基準としていたが、3月29日に撤廃した。

 インドはこれまで、パキスタン、バングラデシュの企業からの買収に対して事前許可を求めていた。4月18日に投資政策の見直しが行われ、インドに接するすべての隣国を対象とした。買収の主体者が隣国の居住者、または市民である場合も規制対象だ。

■買収者の想定は中国企業か

 インドの規制地域の拡大で、中国が規制対象に含まれることになった。地元メディアでは中国企業による買収を警戒したものだと報道されているようだ。

 インド以外の諸外国でも中国企業による自国企業の買収は懸念されるところだろう。中国企業がコロナウイルスの影響で価値が下がった企業を買収する可能性について、多くのメディアで報道されているようだ。

■海外M&A規制は日本企業も 海外M&A戦略に逆風

 各国の政府が主な買収者を中国企業と想定していても、企業国籍だけを理由に規制することは難しい。WTOが規程する「最恵国待遇」に反する可能性があるためだ。海外M&A規制の対象はある程度広範になると想定され、日本企業にとっても影響はありそうだ。

 海外M&Aを経営戦略に位置づける日本企業は少なくない。経済産業省の調査によると、東京、大阪企業の7割以上が、福岡企業の約4割が海外M&Aの経験があると回答している。

 今回の規制で海外M&Aの審査期間の長期化が想定される。M&A仲介企業や海外M&Aを経営戦略とする企業の業績に注意が必要だろう。(記事:ファイナンシャルプランナー・若山卓也・記事一覧を見る

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